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遊び心と冒険心で見つける水辺の風景。清家道子「水の惑星」インタビュー

大分を拠点に九州を巡りながら自然風景を撮影している清家道子さんの写真展が2024年5月16日(木)~ 5月27日(月)まで開催されました。今回は「水辺の風景」をテーマに、この2年間で写した作品を中心に発表。映画が好きで、目の前の風景とシーンを重ね合いながら撮影したという作品についても伺いました。



身近にある宇宙を伝えたくて

――清家さんはいつも四季折々様々な自然風景を撮影されていますが、今回、水辺の風景をテーマにまとめられたのはなぜですか?

実は以前から「水の惑星」というタイトルの写真展をやってみたいという思いがあったんです。OM SYSTEMのカメラは防塵防滴なので、このテーマがぴったりでしょう。OM SYSTEMのカメラで撮ったものは、水の中へジャブジャブ入って撮ったものが多いですから。他のカメラは、それほどジャブジャブとは濡らせないですからね。

――「水の惑星」というタイトルはどうやってつけられたのですか。

私は大分に住んでいるので大分周辺を撮影することが多いですが、身近なところにも宇宙がある、ということを伝えたくて、このタイトルを付けました。小さな水滴の中にも、こことはまた違う世界があって、そういうことが描けたらいいなと思ったんです。私たちはすごく水の豊かな場所に住んでいるということを、改めて感じていただいたらいいなと思いました。

パッと見て撮る風景写真もありますが、イメージを膨らませて、その先にある何かに例えて切りとることもあります。ファインダーを覗くと、ドラマが見えたり、ストーリーが生まれたり、そういうのが面白いなと思って撮った作品を、今回は集めてみました。

映画のシーンが目の前の風景と結びつく

――映画が好きで、映画のシーンをイメージして撮った作品もあるそうですね。

そうなんです。「これってこの間見た映画の雰囲気じゃない?」とか、「この映画のあのシーンのような写真、撮ってみたい」と思うことがありますね。

たとえばこの写真は、私の好きな映画「her/世界でひとつの彼女」のワンシーンのようだなと思って撮りました。男の人が女の人に恋をして、最後は振られてしまうストーリーなのですが、主人公がすごく落ち込んでいるときに、ベッドに横たわって、部屋の中で舞うホコリをずっと見ているというシーンがあるんです。それを見たとき、すごい監督だなと思ったんですよ。部屋の中でホコリが舞う様子なんて、誰も気に留めませんよね。

「浮遊」
空中に漂う水飛沫。水は自由自在に姿を変える。時に優しく、時に力強く。
OM-D E-M1 Mark III
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
F2.8、1/20秒、ISO640
大分県福貴野の滝

そのシーンがすごく美しくて、いつかこんなシーンを撮ってみたいという思いがずっと心の中にあったのですが、この滝の水しぶきが空中にふわふわ漂っている風景を見たときに、「あ、これだ!」と思って撮りました。いつもどこかに映画のイメージがあって、見立てて撮ることが多いですね。

大切にしているのは自分で見つけた風景

――水辺での撮影は、濡れたり、足場が悪かったり、大変なことが多そうですね。カメラは防塵防滴なので気にしなくてもいいかもしれませんが。

いえいえ、楽しいですよ。防塵防滴といえば、この写真はもう、びしょぬれになって撮りました。ずぶぬれです(笑)。滝の裏側から、見上げてレンズを拭いた瞬間にパッって撮影しているんです。OM SYSTEMのカメラは、子供心にかえるというか、冒険心や遊び心を表現しやすいですね。

「The hole」
Fisheye レンズは楽しい。私のお気に入りの滝の迫力を最大限に引き出してくれた。
OM-I
M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
F13、1/250 秒、ISO500
大分県福貴野の滝


――確かに、「これは何だろう?」と思う構図や色遣いが多く、遊び心を感じます。

結局、「見つけること」が大切だと思うんですよね。たぶん、あそこに行ってこれを撮ろうと計算したら、もうダメなんです。もちろんそれを撮ってもいいのですが、それだとみんなと同じような写真になってしまいます。三脚が並ぶような絶景では、1番いい条件で撮った人の方の勝ち。それだと勝負できないと思って。私は自分で見つけた風景を大事にしています。

この「水の惑星」のDMになった写真を撮りに行った日も、本当は安心院(あじむ)の雲海を撮りに行っていたんです。でも雲海が出なくて、「出なかったなあ」って下に降りたところで、靄が出ているプールの水面に太陽が写っているところを見つけました。

「水の惑星」
池の中に小さな惑星が浮かんでいた。ほんの数秒、光は私に違う世界を見せてくれた。
OM-1 
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
F16、1/5,000秒、ISO200
大分県安心院町

大分県は「温泉県」でしょう。水温が高いので、いたるところから靄(もや)が出ている。靄があるから、周りが虹色に輝いていて。手前に葉っぱもあって。こういう‟美味しい風景”を見つけると、「今日はやったぞ!」って思いますね(笑)。


――緑の線がうねるこの写真も、一見何かわからなくて面白いですね。

この写真はOM SYSTEMのライブNDを使って撮影しています。浮草が風に吹かれてゆっくりゆっくり動いている様子を、水たまりに三脚を立てて撮影しました。周りにいた人には、「この人、なんで水たまりを撮ってるの?」って思われていたと思います(笑)。2次元の世界に時間が加わることによって、面白い表現ができると思うんですよね。

「風の記憶」
水たまりの浮草が風に吹かれていた。水は風の形を物語ることが出来る。
OM-1 Mark II
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
F11、3.2秒、ISO100、ライブ ND128
福岡県築城


――ピンクのお花畑に写る白い粒は、雨でしょうか?

そうです。雨の粒ってなかなか写らないんですよ。だからビニール傘をレンズの前にかざして撮影しました。雨が降っている様子が綺麗だなって感じる表現をしようと思ったら、ひと工夫をすることでメッセージを伝えることができる。写真って楽しいですよね。

「雨に唄えば」
濡れる蕎麦の花にそっと傘を掲げてみた。傘に落ちる雨音が心地いい。
OM-1
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO F2
.81/40秒、ISO400
福岡県豊前市


自分の世界を作り上げる写真展

――展示構成はどのように考えましたか?

展示ディレクションをお願いしたアートディレクターの三村漢さんと一緒に考えました。私が思っていることと、三村さんが思っていることがピタっと合って、私がイメージした通りに三村さんが落とし込んでくださいました。これを自分でやろうと思ったら、形にするのに時間がかかったと思いますね。

文字が中央で区切られた、水鏡のようなイメージのタイトルロゴも、三村さんがデザイン。

最初は「なんだろう?」という雰囲気の写真から始まってストーリーが続き、インパクトのあるものも織り交ぜながら、リズミカルに構成を考えました。見に来てくださった方が作品に入り込みやすくするために、キャプションにはすべて一言コメントを書いています。

「光の楽園」
水は全ての光を集め色彩を放つ。渓谷の虹も空の虹も。全ては水の美しい企みだ。
OM-D E-M1 Mark lI
M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
F14、1/100 秒、ISOl250
熊本県菊池渓谷


――今回、写真展をやってみていかがでしたでしょうか?

写真っていいものだなって改めて思いました。展示の設営をしているときからワクワクしてきて……。自分の世界を作るわけじゃないですか。その空間が2週間、ここにあると思ったら、嬉しいですね。

今はSNSやメールで写真をやり取りする時代で、それだけで完結してしまう仕事もありますが、こうやって写真展で自分の世界を作ることは、本当に意義があることだと思いました。これからもこういう機会を定期的に作っていきたいですし、写真を撮っている人は写真展を経験してみるべきだと思いますね。

ろうそくのようなランプとお花が飾られた中央のテーブル。
「ここをブラックホールだと思って、
ゆっくり座って周りの惑星(写真)を眺めてほしい(笑)」。


文:安藤菜穂子
写真:竹中あゆみ

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