『 夢中にさせられた湖の絶景「箱根海賊船」』 社員リレー#01:高橋 渉
都心から近い観光地「箱根・芦ノ湖」には、中世のヨーロッパの帆船を思わせる3隻の「箱根海賊船」が運航されている。乗り物好きということもあり、芦ノ湖の風景を撮影出かけたときに海賊船も撮影をしていた。この海賊船への興味が、のちに写真展の開催、写真集の出版へつながるとは、この時は想像もしていなかった。
■きっかけはこの1枚
夕景写真の話から、暗い光景の中の海賊船ってどんな感じだろう。思いたったのはいいが夕方に運航を終わってしまう。一年のうちで一番早く日が沈む11月末頃、薄暗い光景で撮れるのではないかと、2019年11月28日に撮影に出かけることにした。天気予報は雨、より薄暗いのではと期待が膨らむ。元箱根港に着くと、急な冷え込みで発生した気嵐により幻想的な光景である。その中をゆっくりとやってきた海賊船はまるで物語に出てくるイメージ。夢中になって撮影した。この美しい光景を多くの人に見てもらいたいと思うが、SNSで投稿するのではもったいない。であれば、写真展で発表しようと、箱根に通い、海賊船を撮り続けるきっかけとなった。
■もともとは鉄道写真からの発想
四季折々の風景、時間帯の違い、天候の違い、朝日や夕日が反射する瞬間や、星と一緒に撮影する夜景など、これまでの鉄道撮影の経験から、風景の中の鉄道車両を海賊船に置き換えることで撮れるだろうという発想からのスタートである。水面の輝きや反射、湖面に立ち上がる霧や気嵐など、湖ならではの自然現象は、鉄道では経験していなかった撮影体験であった。
■観光の応援につながる写真展
箱根海賊船の撮影に通い始めて一年半、四季を通した風景が揃ってくる。2021年10月、箱根・宮ノ下「NARAYA CAFÉ GALLERY」で、初の「箱根海賊船」をテーマにした写真展を開催した。観光客に人気のカフェで、芦ノ湖への観光応援につながったと思う。この写真展をきっかけに、2022年10月には神奈川県南足柄市の温泉施設「モダン湯治 おんりーゆー」、2023年3月には京都市東山区のカフェギャラリー「Gallery Cafe Cherry」での写真展開催につながった。
■観光ポスター
撮影した作品が観光の応援になればと、海賊船を運航している箱根観光船株式会社にも相談をしていたところ、2023年3月に小田急電鉄沿線で掲示するポスターのお話をいただいた。
■出版物へのチャレンジ
2024年には箱根海賊船が就航して60周年を迎える。この記念の年に写真展を開催したい、できれば写真集も出版したい、と希望が湧いてくる。写真家としての目標のひとつの写真集出版。いくつか当たってみたところ、旅行読売出版社より出版いただけるお話をいただいた。箱根の外国人観光客にも手に取ってもらえるように制作が進み、2023年10月13日に発売となった。
■身近にあるかも。魅力のある撮影テーマ
インターネット、SNSの普及で多くの撮影地や情報を得ることができる時代。その反面、有名な撮影地は、SNSなどインターネット上で見かけることも多く、オリジナリティのある表現が難しい。鉄道もそのひとつだが、例えば公園の保存車両や遊園地・観光地の乗り物は、撮影の対象として捉える人が少なく、撮り方次第で新しい発見がある。箱根海賊船もそのひとつで、撮影テーマとして捉える人が少ないようで、だからからこそ、自分で発見し、これまでに見たことがなかったオリジナリティのある作品につながったのだと思う。「みんなが知っている。でも撮影のテーマとして撮っている人がいない。」まだまだあると思う。
■わたしにとっての OM SYSTEM
小型軽量という特徴で、広角から望遠まで多用する箱根海賊船の撮影においても機動性が高いが、実際に使ってみると、小さく軽いだけが魅力ではないことに気づかされる。芦ノ湖の悪天候による幻想的なシーンは、夢中になると傘もささず濡れながらの撮影、土砂降りでもあきらめずに撮影できるのはありがたい。高感度性能も上がり、より暗い条件での撮影も可能になった。さらに、手持ちハイレゾショットによる高画質の夕景・夜景、ライブコンポジット機能を使った星が流れた撮影など、オリジナリティのある作品がプラスになる。OM SYSTEM でも撮れる、ではなく、OM SYSTEM だから撮れる、を感じさせられる。
美しい風景も、安全に運行されている乗り物も、多くの方々、そして地元の方々によって維持されている。撮影に出かけた時には、地元で食事をする、宿泊をする、お土産を買う、交通機関を利用するなど、「撮らせていただいている」という気持ちで貢献することが大切だと思う。その上で、撮った作品でできること、これからも考えていきたい。
文・写真:高橋渉