「チーム・チャンピオンズ・カップ(TCC)2022 Nagano」奮闘記
「PHOTOMATCH」は、隔月刊『風景写真』と月刊『フォトコン』が主催する、写真家5人1組のチーム対抗戦により写真の評価を競う「フォト・バトル」。2チームのメンバーにより1対1の対戦を順に行い、5人のジャッジ(審査員)による紅白の旗による判定で、3本以上旗が上がった選手の勝ち。これを選手を替えて繰り返し、3人先勝したチームの勝ちとなる。
「PHOTOMATCH TEAM CHAMPIONS CUP(フォトマッチ チーム チャンピオンズ カップ)以下、TCC」最大の特徴は、会場となる長野県茅野市に集合し、決勝トーナメント前日から当日の朝までかけて行われる撮影パートにある。全国から集結したチームが同じ地域で、限られた時間内に決勝トーナメント用の作品“イコール コンディション” で撮影し作品を提出して競い合う。2017年7月に第1回大会が開催され、コロナ禍により、今年10月15日(土)、16日(日)の2日間、長野県茅野市で第4回大会が開催され、OMデジタルソリューションズとなって初めて開催されるTCCに、社員を中心とした「チーム OM SYSTEM」を結成し参戦しました。
これまでの取組み
TCCとの関わりは、2018年9月のTCC第2回大会に、会場にオリンパスブースを出展したことに始まります。長野出張から戻った広報担当者が興奮気味に職場メンバーに報告する「チーム南信、優勝しました!機材は全員オリンパスです!TCC、面白いっすよ!」という声がフロアに響き渡り、社内にTCCの存在が認知されるようになりました。
2019年3月。オリンパスプラザ東京(現OM SYSTEM PLAZA)で開催されたTCC2018優勝記念写真展「growth」期間中に開催した祝勝会で、チーム南信メンバーからもらった言葉が「風景写真で、強力手ぶれ補正、防塵・防滴、小型軽量のOM-D(現OM SYSTEM)は最強」、TCCに参加している写真愛好家の方々にOM SYSTEMが多いのを知り、その環境を社員も体験しよう!と、社員チーム「チームオリンパス」の結成に向け動き始めました。
その後、「TCC 2019」に「チームオリンパス」として初参加。撮影日は大雨でしたが、防塵・防滴構造のOM SYSTEMは機材の心配をしなくて良いので、メンバー全員が力を発揮して4位の成績を残しました。
その後、「チームオリンパス」は、風景写真の楽しさ、風景写真愛好家の気持ちを理解することを目的として、毎回全員メンバーを入れ替え挑むことになり、2020年、コロナ禍でオンライン開催になった「ePHOTOMATCH エキシビジョンマッチ」に出場。
TCC2022参加とメンバーの結成
2022年4月。「いまの風景写真愛好家の気持ちを理解しよう!」会社がオリンパスからOMデジタルソリューションズとなり、コロナ禍を経て3年ぶりのリアル開催が発表されたTCC2022への出場機運が社内で高まり、チーム名を「チーム OM SYSTEM」と改め、ベテランと若手、男女混合、出るからには優勝を目指せる、選抜メンバー選びがスタートしました。すぐに決まったのが、写真・カメラに精通し風景写真への造詣も深い、OM SYSTEM PLAZAスタッフ、高橋渉さんと香嶋晃さん。営業部から推薦メンバーとして、若手社員の辻岡将太さんと本橋育夢さん。しかし女性社員メンバーの選出が難航。TCC出場経験、本選会場となる長野県の地の利もあり、2019年のオリンパスプラザ東京(現OM SYSTEM PLAZA)第4回Focus展で作品展示し、メンバーとも交流のあった山田陽子さんを社外メンバーとして加え、香嶋さんをキャプテンとして、TCC2022へエントリー。ここから5ヶ月間の戦いがスタートしました。
本選までの道のりと苦悩
チーム OM SYSTEMは、その特徴でもあり弱点でもあるのですが、毎回メンバーをチェンジすることを社内で取り決めをしており、経験者がいないことでした。ある意味フレッシュなチームではありますが、積み重ねがないため経験不足が否めないこと、撮影地である長野を熟知しているメンバーがほとんどいないことが課題でした。そんな中、唯一のTCC出場経験者で長野在住の社外メンバー山田陽子さんの存在は大きく、オンラインでの定例会を通じ、作品面でもメンバーに大きく影響を与えました。本選の撮影地としても「乗鞍」を提案いただき、本人は7度も「乗鞍」に撮影に行かれ、撮影ポイントなども我々に余すところなく教えてくれました。
また、写真家でもある高橋さんからは、本橋さん、辻岡さん若手2名へ写真表現方法の指導も頂き、とくに前ぼけを生かした写真表現は、本選でもチーム OM SYSTEMの前ボケが話題になるほどでした。
普段は、なかなかチームメンバー5名がリアルで集まれる機会もありませんでしたが、7月には5名そろっての昭和記念公園での撮影会を実施。イコール コンディションでの撮影の面白さを体験しつつ、それぞれの個性的な作風を理解し合いました。
チームTシャツ
チームの一体感、気持ちを高めてくれるチームTシャツはとても重要です。社内デザイナーより提案された、6種類のデザインよりメンバー投票でチームTシャツが決定!
いざ本選の地へ!
香嶋さん、高橋さん、山田さんの3名は前日金曜日から現地入り。本番の時間とほぼ同じ時刻で昼間の乗鞍のロケハン、翌日早朝のロケハンを実施。1週間の違いで大きく紅葉の進む乗鞍での当日のルートや撮影時間配分を決めました。最も大変と思われる撮影後のセレクトも本番と同じホテルのロビーで実施し、本番ではセレクトの時間がしっかり取れるように朝の撮影は早めに切り上げることを決めました。前日のロケハンは時間配分や撮影環境が本番環境に近いのでとても重要でした。
そして本番の日。当日入りした本橋さん、辻岡さんと合流し、いざ茅野市民館へ。当日は好天に恵まれ、開会式の後はお昼を食べる間も惜しみ、運転を交代しながら車中でコンビニおにぎりを食べつつ、いざ乗鞍へ。2時半ごろに現地到着し。1分、1秒を惜しみロケハンしていた撮影ポイントへと向かいました。それぞれがいろいろな場所でじっくり粘って、納得がいくまで撮り続けました。日が傾くのも早く、夕暮れまで撮影し、暗くなった時点で1日目の撮影を終了。松本まで戻った時点で、お昼を食べられなかった分まで、蕎麦屋でしっかり食べながらも、それぞれ各自の作品セレクト。茅野へもどりました。ホテルについても、そのままロビーでチームとしてのセレクト開始。皆でじっくり話し合いながら、誰のどの作品をどの順番で出すかも大まかに決めました。「最初の作品は、OM SYSTEMらしさを出そう!」と、メンバー何名かがチャレンジしていた、ライブND機能を使った露光間ズーミングの作品に目が止まりました。本家の萩原史郎先生の作品(*)レベルに達しないと実際には評価いただけないだろうと、議論もありましたが、辻岡さんの露光間ズームの作品が良かったため、辻岡さんの作品でチーム OM SYSTEMのスタートを飾ろう!と、全員一致で決めました。
大筋の提出作品がまとまったのは21時半過ぎ。1日目の作品をメモリーに入れて仮提出。翌日良い作品が撮れたら入れ替えることにし、翌日の早朝撮影に向けて解散。そして翌朝3時半集合で諏訪湖畔の赤砂崎公園へ。朝焼けもなく、街明かりの玉ボケを背景に様々な被写体を撮影しましたが、やがて日が昇り撮影終了。宿に戻り再セレクトをし作品提出。あとは本番で戦うのみとなりました。
抽選会で予選リーグの対戦3チームが決定。デザイナーの三村漢氏率いる「漢ジャニ6」と昨年準優勝の「ええねん!関西」との戦いとなりました。
初戦の相手は「漢ジャニ6」。キャプテン三村漢さんは、前回大会にも出場し、OM SYSTEM GALLERYディレクションでもお世話になっている写真もTCCも熟知している強豪チームです。 第一ゲームは、予定通り、辻岡さんの露光間ズームの作品で勝負。残念ながら第1ゲームを落としましたが、第3ゲームで、山田さんが写真家萩原れいこさんに勝利する快挙もあり、ゲームカウント3-2の僅差で勝利。
そして第二試合。昨年準優勝の強豪「ええねん!関西」戦。第2ゲームこそ満票で勝利するも、結果は1-4で敗戦。敗者復活の「ラウンド4進出チーム抽選会」もはずし、決勝ラウンドに進むことは出来ず。チームOM SYSTEMの戦いは終了となりました。チームメンバー用意した作品をすべて出すことが出来ない悔しさを胸に、観客席で決勝ラウンドの行方を観戦しました。TCC2022の優勝は「風フォト」。最後まで素晴らしい作品を揃えた「風フォト」の強さが光りました。
そして表彰式。上位チームの表彰に加え、個人賞が発表され、「萩原史郎賞」として、「チームOM SYSTEM」から、写真家萩原れいこさんに勝利した山田陽子さんが選ばれました。チーム結成当初から、紅一点、チームを盛り上げて頂いた、山田さんの受賞に、メンバー全員で喜びを分かち合い、5ヶ月間の充実感と、少しの悔しさを胸に帰路につきました。
TCC2022の熱い戦いの模様は、是非YouTube@PHOTOMATCHチャンネルをご覧頂ければと思います。
TCC2022に参加して
■香嶋晃(キャプテン)
正直最初は写真でマッチをすることに少なからず抵抗もありましたが、チームの仲間と練習会や、素晴らしいロケーションでロケハン撮影することでモチベーションも上がり、5名そろってロケハンする頃にはチーム全体に「勝つ」意識が大きく芽生えていたと思います。あのステージで「判定」を待つスリルは体験しないとわからない面白さがありました。みんなそうだと思いますが、もっと勝負したかったという気持ちになっていたのは、最初の気持ちから考えると大きな変化でした。参加者が病みつきになるのもわかる気がしました。決勝に行けなかったのは非常に残念でしたが、チームとしてOM SYSTEM の良さを伝えられたと思います。
一緒に戦い抜いたチームのメンバーの皆様、陰で支援してくれた社員スタッフにも感謝いたします。ありがとうございました。
■高橋渉
風景作品で競い合うというイベントではあるが、そのために参戦者の工夫が多く盛り込まれた作品が多く、お互いに刺激にもなり、勉強になるイベントだと感じました。参戦して残っていくための、撮影地選びに始まり、撮影テクニック、作品のセレクトや順序など、総合的に作戦を練らなければ上位の残れないというゲーム感覚もある大会で、あとは対戦作品との運任せ。参戦者、観客だけではなく、司会者、審査員も一緒になって盛り上がる楽しいイベントでした。参戦することで、風景写真にOM SYSTEMがメディアミックスで訴求できるだけではなく、当社ユーザーの参加者に対する信頼感も出せたのではないかと思います。
■辻岡将太
TCCは同じ撮影地、限られた時間で作品を提出しなければならないという難しさがありました。出場が決まってからの約5か月間は先輩方のご指導の下、撮影会や講評会を重ね、コンピュテーショナルフォトグラフィを中心とした練習をしてきました。「カメラは持ち出さないと意味がない」と言われるように、カメラを持ち運ぶことを習慣化すると、美しい被写体が目に留まるようになり、どうやったらこの美しさが伝わるのだろうと考えるようにもなりました。こうした練習の甲斐あって、本番ではOM SYSTEMらしい作品を提出することができ、何とも言えぬ達成感を味わうことができました。これもひとえに皆様のサポートがあったからこそです。ありがとうございました。
■本橋育夢
これまでは一人で写真撮影を楽しんでいましたが、今回TCCに参加し、チームのメンバーと一緒に撮影したことは自分にとって本当に貴重な経験となりました。カメラの構え方。撮影に対する姿勢。被写体の見つけ方。持ち物、服装、機材、お昼ごはん……。すべてが新鮮で勉強になりました。対選終了後は悔しさで帰りの電車内でも目が冴えたままでした。「メンバーの作品をもっと見てほしかった」 。その気持ちが非常に強かったです。皆で協力して撮影し選定した写真からは、どれも誠実に撮影に望んだという気持ちが溢れており、その全てが心の底から美しく魅力的な作品であると思っています。また自分への後悔も大きかったです。限られた時間の中で、自分が出来たことは非常に少なく、未熟さを噛みしめる二日間でした。最後に、今回のTCCに関わった全ての皆様、応援して下さった皆様、OMDSの皆様、長野県の大自然、良い瞬間を収めてくれたカメラとレンズ(出番のなかったレンズも)、全てに感謝いたします。言葉では言い尽くせない、かけがえのない経験をさせて頂きました。自然風景撮影とカメラがより一層好きになりました。ありがとうございました。
■山田陽子
OM SYSTEMのいちユーザーでしかない私が、チームOM SYSTEMからTCCに参加させていただくことは大変光栄なことで緊張やプレッシャーはありましたが、出場することが決まってからの約5ヶ月間、オンラインでチームメンバーの皆さまとミーティングを重ね、”TCCで勝てる写真”を自分なりに考え試行錯誤する時間はとても有意義なものでした。大会当日は、撮影現場で作品を作り上げて提出しなければならないという、普段の撮影では感じることのない緊張感がTCCならではという感じでした。全国の風景写真愛好家、プロの方々の作品を間近で見られるのはとても刺激があり勉強になりました。チームとしては決勝トーナメントへ進むことができず悔しい結果となってしまいましたが、大変光栄なことに個人賞として萩原史郎賞を受賞することができてとても嬉しかったです。あらためましてこのような機会を与えてくださったことに感謝しております。ありがとうございました。
TCC2022本選提出作品(未公開作品含む)
文:TCC2022 チームOM SYSTEM実行委員、チームOM SYSTEMメンバー
写真:小口一也、田中博