3年ぶりの開催。「第17回太平洋写真学校-北上教室」
新型コロナの影響で3年ぶりに開催された「太平洋写真学校―北上教室」。全国から31名の参加者が集まり、プロ写真家の指導を受けながら、宮城県石巻市北上町の郷土芸能、自然風景を撮影した、2022年12月3日(土)~4日(日)の2日間をレポートします。
太平洋写真学校 北上教室のはじまり
「太平洋写真学校 北上教室」は、北上町時代(2005年石巻市に合併)から「写真の里」として町おこしの一環で、1997年12月に 第1回写真教室が開催されて以降、これまで17回の教室が開講されています。
始まりは、当時の北上町役場の写真好き職員が、風景写真家 竹内敏信先生の事務所へ1本の電話を掛け、たまたま事務所にいらっしゃった竹内先生が電話に出たことから、2つ返事でスタートしたとのこと。
2011年3月。東日本大震災で甚大な被害を受け、6年間の休会ののち、2017年に再開。新型コロナの影響で、今年は3年ぶりの開催となりました。
北上町には、写真愛好家を惹きつけてやまない、雄大な自然と歴史ある郷土芸能、そこで暮らす温かい人々の営みがあります。
「第17回太平洋写真学校-北上教室」3年ぶりに開催
2022年12月3日(土)~4日(日)の2日間、プロ写真家の指導を受けながら、石巻市北上町の郷土芸能や北上川河口に広がるヨシ原などの自然景観を撮影する今回の教室に、地元宮城県内をはじめ、遠くは大阪から写真愛好家31名が集まりました。
1日目13:00から北上総合支所にて開校式を開催。開校式では、齋藤正美 石巻市長のあいさつからスタート。
齋藤市長は地元写真クラブにも所属している写真愛好家でもあります。
にっこり写真セミナー実行委員会長 横山宗一氏の開会宣言、講師のプロ写真家3名、竹内正氏、井村淳氏、清水哲朗氏の紹介の後、今回、希望者に2日間貸し出すミラーレス一眼カメラ「OM SYSTEM OM-1」を紹介。レンタル希望者10名にOM-1の貸し出しをしました。
最初の撮影場所、釣石神社へ移動。釣石神社は、社名の由来ともなっている巨石があり、幾多の災害でもビクともしないことから「落ちそうで落ちない受験の神」として有名で合格祈願に多くの参拝者が訪れています。
釣石神社境内には特設ステージが設けられ、北上地区の女川法印神楽の代表演目の一つ「笹結び」の舞が演じられ、勢い余った神楽師は、ステージから飛び出し演舞。参加者が様々な角度から神楽の舞を切り撮りました。
神楽の撮影に夢中になっている間に、夕暮れが近づき、日本の音風景百選にも選ばれている、新北上川河口のヨシ原へ移動。北上川に沈む太陽に照らされ赤く染まるヨシ原は絶景です。
当日は曇りの天候だったため夕焼けはあきらめていましたが、新北上川河口に到着した頃、雲の切れ間から太陽が顔を出し、ヨシ原を赤く染め参加された方々の気持ちも最高潮となりました。
日没まで撮影を行い、宿泊先の「追分温泉」に移動。参加者全員が「追分温泉」に宿泊します。
過去は夜の宴会も楽しみ一つでしたが、今回は新型コロナ感染対策もあり食事は黙食。「追分温泉」は夕食も楽しみの一つ。三陸の海の幸を中心とした自慢の創作料理が並びました。食事が終わる頃、サプライズのライブ演奏。2022年2月に他界した竹内敏信先生と、これまで太平洋写真学校の夕食を音楽で華やかにしてくれ、昨年1月、65歳の若さで他界した、地元ミュージシャン渋谷修治さんを偲び、渋谷さんの作詞作曲の音楽が演奏されました。
2日目は早朝の日の出撮影。朝5時に宿の玄関に集合。北上川河口へ移動。
東日本大震災後に建設された高さ7.5mにもおよぶ防潮堤から、太平洋に昇る太陽を狙います。
早朝撮影後、宿に戻り、朝食をいただき、再び北上総合支所に集合。昨晩のうちに参加者から提出された写真を、竹内力先生、井村淳先生、清水哲朗先生の各グループ毎に講評会。参加者の力作に各講師のアドバイスが語られました。参加者の講評会後は、3名の写真家による作品発表。写真家の視点、作品撮影に取り組む姿勢などを学びました。
最後に横山宗一実行委員会長より、参加者の皆さんに写真教室の修了証が手渡され、写真教室を終了。
最後に、にっこり写真セミナー実行委員会 横山宗一会長および2日間の写真教室に参加し、自らも追分温泉で働く、横山恵美さんに、太平洋写真学校について伺いました。
太平洋写真学校への想い – にっこり写真セミナー実行委員会長 横山 宗一
お陰様で3年ぶりに17回目の写真セミナーが開催されました。県内外から参加された方々の「よかったよ。お料理おいしかったよ。」というお言葉にいつも支えられてきました。また、スタッフと先生方の達成感に満ちた笑顔も印象的でした。
思い起こせば郷土愛に満ちた前会長・茂木一郎さんと数名によるフォトサークル“つくしんぼ”が中心となり、何のつてもなくしてかけてしまった一本の電話が縁で第1回竹内敏信太平洋写真学校北上教室(にっこり写真セミナー)が開催されました。
子供のころから何気なく見てきた北上川河口の風景や暮らしと日常が写真を通して芸術として捉えてもらったとき、私たちの中で少しずつ意識と価値観が変わっていくのを覚えています。また、ヨシ原は環境省のフォト風景100選に選ばれました。
昨年残念なことは、竹内敏信先生が天国へと旅立たれたことです。でも時々、遠い空の上から先生の声が聞こえてきます。「セミナー楽しかったでしょ。この美しい風景は財産ですよ。未来の子供たちにちゃんと残してやってください。」 ありがとうございます。これからも頑張ります。
太平洋写真学校を繋げる想い – 追分温泉 横山 恵美
幼いころからセミナーが近づくと両親をはじめ周りの大人がそわそわしていました。よくわからないけど、わくわくするイベントなんだなと子どもながらに感じていました。
今回、はじめて参加して、その意味がちょっと分かった気がします。セミナーでは神楽の“動”を撮る難しさ、ヨシ原の“静”をとらえるポイントで表情が変わっていくおもしろさを体験できました。講評では一緒に参加したカメラ初心者の友人の作品からベテランさん、先生方の作品も拝見でき、同じ時間と場所を共有しているのに、技術や視点の違いで多種多様な世界観があってとても刺激的でした。写真セミナーを通して新たな仲間ができ、キラキラした世界を見ることができました。
セミナー参加後は日々の生活の視点が変わり新しい発見がたくさんあります。また、一緒に参加した友人2人もとても楽しんで参加していたので、カメラ仲間もどんどん増やしていきたいです。もっとカメラのことを学んで北上町の気づかなかった輝きをたくさん映していきたいです。
新型コロナにより、オンライン中心の写真セミナーでしたが、久しぶりにリアルに写真愛好家の皆さんが写真に取り組む姿、カメラ・写真の悩みを伺えた2日間でした。“見たい・会いたい・食べたい”。写真を通して地域と人が繋がっていく!カメラにはそんな力があります。
文:横山宗一さん、横山恵美さん、OM SYSTEM note編集部
写真: 横山恵美さん、追分温泉スタッフ、OM SYSTEM note編集部