鳥たちの冬
冬は、鳥たちとの出会いが多くなる楽しい季節です。この時期、日本で見られる鳥は、季節変化による大きな移動(=渡り)をしない「留鳥」、夏を過ごした高地から温暖な平地へと降りてくる「漂鳥」、そして北国から渡ってくる「冬鳥」です。求愛や子育てに忙しい春から夏、渡りの只中で日々鳥が入れ替わる秋といった時期に比べ、越冬期の鳥たちの暮らしは幾分ゆったりと、そして規則的な感じがします。朝夕の冷え込みは身に堪えますが、防寒対策を万全にして外に出かけてみましょう。
冬の花形 カモ類を楽しむ
冬の水辺に彩りを添えるのが、カモの仲間です。日本で冬を過ごす間に、雄たちは求愛のための美しい羽で飾られ、とても見応えがあります。運が良ければ求愛のダンスも見られます。1羽の雌を、複数の雄が追いかけているようなら注目して目で追ってみましょう。一方の雌たちも、一見どれも茶色で地味に見えますが、1枚1枚の羽に浮かぶ縞模様が美しく、つい見入ってしまいます。
同じカモ類でも、山奥のダムや自然度の高い河川に暮らすものは、遠くに人の姿を見るだけで飛び去ってしまうほど警戒心が強いのですが、都会に近い池や川につどう個体は比較的人との距離が近いものが多く、撮影の入門にも適していると言えます。
複数種が同時にいることも多いので、見分ける練習にもよいでしょう。大きさや色の見え方、体型の違いを意識することも大切ですが、行動の違いにも注目すると良いと思います。例えば、餌の取り方や、泳ぐ時の首の振り方、飛び立つ際の助走のとり方などが浮かびます。写真にはなかなか写らない識別のポイントだけに、現場で見る意義と楽しみがあると言えるでしょう。
休息していたカモ類が首を上げ、せわしなく鳴き始めるのは、天敵が現れたサインです。上空を飛ぶタカ類や、湖畔にネコやキツネなどの姿を探してみましょう。この警戒の仕草は、人に対しても見られます。撮影者の接近が原因と考えられる時は、粘っても警戒する姿や、逃げ去る姿しか写せません。接近をやめ、鳴き止む位置まで引き返すのが良いでしょう。
冬の小鳥の探し方
水辺に比べて発見の難易度が高い林内の小鳥ですが、木々の葉が落ち、見通しが良くなる冬は、姿を見つけやすくなる時期です。「地鳴き」と呼ばれる短い声が聞こえたら、梢枝や植え込みを双眼鏡で探ってみましょう。
鳥を見つけやすいということは、鳥たちから撮影者の姿が見つかりやすいということにも留意しましょう。常緑の植え込みや、木の幹、テトラポッドなどをうまく使い、半身でも体を隠しながら観察することで、鳥を驚かせないように心がけると、鳥の方から近づいてきてくれます。そうすれば、無理に追いかけるよりも近くで、そしてゆっくり撮影できるチャンスが増えます。
ジョウビタキやモズのように、冬の間は単独で縄張りを構える鳥もいますが、アトリ類やレンジャク類などのように、大きな群れを作って行動するものも多くいます。このような時は、1羽を驚かせてしまうと、緊張感が群全体に伝わってしまいます。逆に、近くにいる1羽が安心していると、他の個体が後に続いて近づいてくれることがあります。焦らず、全体に気を配りながら撮影しましょう。
冬らしさを活かした撮影のコツ
冬らしさと聞いて連想されるものは人によって様々ですが、例えば雪を写し込むことができれば、多くの人が思う「冬」のイメージを表現できます。
また、冬は鳥の生活リズムがある程度決まっているので、意識して観察することで、朝日と鳥を絡めた作品が撮りやすくなる季節です。例えば、ハクチョウ類やツル類などは、毎朝同じ時間にねぐらを発ち、ほぼ決まった時間に餌場から戻ってくることがわかります。天候などが原因と思える多少の前後はあるものの、撮影のスケジュールを立てやすい時期です。前日の観察結果をもとに、太陽の位置や光線状態、撮りたいイメージに合わせて立ち位置を調整することで、作品の完成度を高めていくことができます。日の出の前後は寒さも厳しいものですが、澄んだ空気のおかげで、撮影にも向いていると言えます。狙ったイメージ通りに1枚が撮れた時の達成感は格別です。ぜひ、通って挑戦してみてください。
写真・文:写真家 菅原貴徳
野鳥撮影のマナー・注意点
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