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Vol.4 高速オートフォーカス、高精度な被写体認識の実現までには多くの苦労があった

OM SYSTEMを生み出すモノ作りの裏側「ビハインドストーリー」を社員が語るシリーズ第3弾では、コンパクトなボディーに高画質と高性能を兼ね備え、唯一無二の撮影体験を提供する「OM SYSTEM」のフラッグシップモデル「OM SYSTEM OM-1」(2022年3月発売)について全5話でお届けしています。Vol.4は、一瞬を逃さないために苦労を重ねた高速オートフォーカス(以下AF)と被写体認識のストーリーです。

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10万分の1秒でも速く! を目指して50コマ/秒を実現

−さまざまな高性能な機能が搭載されているOM-1ですけれど、イチオシの機能を挙げるとしたら何になりますか

一寸木:AF/自動追従連写性能を18コマ/秒から50コマ/秒にアップしたSH2(高速連写)ですね。処理速度が3倍に向上した新しい画像処理エンジンと、読み出し速度が2倍になった新LiveMOSセンサーによって実現できたもので、像消失(ブラックアウト)しないで連写ができるブラックアウトフリー表示にも対応しています。

西原:1秒間に50コマというのは、動画のコマ送りのような写真が撮れます。鳥の種類にもよりますが、羽ばたきを綺麗にとらえるためには、30コマ/秒以上が欲しいこともあります。 E-M1 Mark IIIは60コマ/秒で撮影できますが、AF/AE追従ではありませんでした。今回ついに、動いている被写体もしっかり捉えられるようになり、被写体を捉える幅がさらに広がったと言えると思います。

−50コマ/秒を実現するには機構的にも大変なんでしょうね。

一寸木:50コマ/秒を実現するには時間管理が重要なんです。 E-M1 Mark IIIの18コマ/秒だと、1コマを撮影する時間は56ミリ秒ありました。ですが50コマ/秒にするには、20ミリ秒の間に露光とAF動作を完了させる必要があります。

一寸木:20ミリ秒に入れるという事は、1000分の1秒単位での調整が必要となります。HW設計段階からメモリも多く積んでいるのですが、処理をするデータの量が大きくなっていることもあり、処理時間も比例してかかってしまいます。各担当が機能の必要性を理解した上で、お客様へお届けするために尽力した結果実現出来ています。試作中、本当に実現できるのか・・・という壁に何度もあたりました。

生まれ変わったAFは、実はスゴイ性能を秘めている

−AFが高速化できている仕組みはよく分かりましたが、AF精度の方はどうなんでしょう?
 
一寸木:精度の方も飛躍的に進化しています。その肝は新型の撮像センサーにあります。今回搭載した撮像センサーには「1053点オールクロス像面位相差クアッドピクセルAF方式」を採用しています。2000万画素の全部の画素が測距可能になっているセンサーで、さらに1画素が4つに分かれた構造になっています。ですから、実際には常時2000万個の測距データを取っているわけなんです。


一寸木:OM-1で採用したセンサーの画素は、AFの情報を取得する機能と画を取り込む機能を全画素で持っている、クアッドピクセル構造を採用しています
 
−そんな違いがあるんですね。ところでOM-1の有効画素数は約2037万画素なので、測距点も非常に細かくできそうな気がしますけど、1053点になっているのはどうしてなんですか?
 
西原:細かくしすぎてしまうと、マルチセレクターを使った測距点の移動が大変になってしまうため、使い勝手を考慮し、1053点を採用しています。
それでも、通常の使用では多いと思いますので、初期値としてはバランスをとってグループ化やステップ幅などを設定しています。

一寸木:いくらAFが速くても、その選択にもたついていたら意味がないでしょう。被写体に合わせたAFターゲット枠の設定が細かく出来るようにしています。また、撮影しながらでもAFターゲット枠の操作を簡単に素早く出来るようにしています。背面のマルチセレクターとAF-ONボタンを併用頂けるといいですね。

西原: OM-1では専用の AF-ONボタンを設けているので、操作間違いをしにくくなっています。ファインダーを覗きながらマルチセレクターと AF-ONボタンでフォーカスポイントを選択するというのも非常にやりやすくなっていると思います。

ボタン設定も独立し分かりやすくなっている

−道具として進化させながら、1053点ある測距点をどう使いこなしてもらうかっていうところまで気を配って設計開発されているっていうことですね。

ディープラーニング技術による「AI被写体認識AF」もかなりスゴイ

−OM-1では被写体認識の性能もアップしていますよね。

西原:今回、被写体認識のためのディープラーニングの技術開発にもかなり時間をかけました。C-AF(コンティニュアスAF)にもそれが活用されていますので強くアピールしたいです

一寸木:OM-1で初めて搭載した新開発の画像処理エンジン「TruePic X(トゥルーピック エックス)」には、ニューラルネットワーク回路というのを搭載しています。これによってAI被写体検出の処理速度が高速化できています。これまで、検出頻度は15回/秒だったんですが、最大60回/秒の検出処理を行うことができるようになりました。また、以前の画像処理エンジンでは4つのCPUを全部使って17ミリ秒での検出をやっていました。「TruePic X」では専用回路にすることで、その3倍以上高速化ができています。ようやく開発陣が本来狙っていたレベルに到達したんじゃないでしょうか。

−被写体認識の精度はどうなんですか。
 
一寸木:精度に関しても進化しています。被写体の背景が雑然としていたり、被写体の手前に余計なものがあるような難しいシチュエーションに対応しました。フレームの全画面で測距できることを利用して、背景の部分だろうとか手前のボケの部分だろう、というところを検出対象から除外して、被写体の絞り込みを行っています。これにより、ピントを合わせたい部分にしっかり合うようになり、被写体検出AFの精度が向上しました。

AI認識により画面内で移動する被写体を逃さず追尾し続ける

−画像処理エンジンの高速化によるところが大きいみたいですね。

一寸木:AI被写体認識AFは、被写体を認識するだけでなく、動体の動きを数フレーム先まで予測しながらAFの位置を決めています。予測することで精度向上に寄与しています。
 
−画像処理エンジンの性能だけじゃなく、撮像センサーやAFとも連動して性能アップが図られているんですね。


#創るをツナグ  OM-1開発ストーリー は、Vol.5 に続きます。

■話し手:一寸木達郎(ELシステム開発2ディレクター)西原芳樹(製品開発1 ディレクター)
■聞き手:柴田 誠(フォトジャーナリスト)

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