カメラとともに見つける、いい時間 - 大川佳奈子
小豆島で暮らす7人の女性が、小豆島の日常をOM SYSTEMのカメラで撮って伝えていく「小豆島カメラ」。メンバー同士がお互いにインタビューをし、一人ずつ紹介していく連載の第2回目です。今回は「がっちゃん」こと大川佳奈子さんをメンバーの坊野美絵がご紹介します。大川さんといえばどこへでもコーヒーセットを持っていき、気に入った場所を見つけてはコーヒーを淹れ、それを写真に撮る姿が印象的。自分なりにいいと思う場所を見つけては、そこに流れる時間を大切にする大川さんのカメラとともにある小豆島の暮らしはいったいどんな風でしょうか。
コーヒーやビールを片手に、ファインダー越しに映る風景だけが変わってきた
「どうする?外でコーヒーでも飲む?」私たちが休日に会う時、会話にしょっちゅう出てくるフレーズです。天気のいい日には海へ、山へ、コーヒーを淹れに出かけるのです。そんな習慣が生まれたのは小豆島で大川さんに出会ったことが大きいかもしれません。
コーヒーを飲みながら会話をしていると、ぽろぽろと溢れてくる旅の話。大川さんはこれまでフィジーやタイ、オーストラリアなどに長期滞在するなど大の旅好き。
「あまり予定を決めずに自由気ままに動き、たった一泊でも旅先の日常に入り込むように、そこで生活するように過ごすのが私のスタイル」
滞在先では毎朝同じ喫茶店に通うのが好きだったのだとか。店主や居合わせた人と仲良くなることも多く、人とつながる時間を大切にしていました。大川さんの撮る写真を見ていると、小豆島での過ごし方もその旅の延長のように見えることがあります。
「大学生頃からコンパクトカメラで写真をよく撮っていて、旅先でもたくさん撮ったな。昔の写真を見てみるとずっと同じものを撮っているんだよね。旅で出会った人。特にこどもやおばあちゃんをよく撮ってたね。それからスピーカーで音楽を流して、コーヒーやビールを飲みながら見た風景を撮っていた。東京にいた頃は、いつか自分のカフェを持ちたいと思い、カフェ巡りをしては写真を撮ってコレクションしていたこともあったな。その背景が、今は海や山に変わった。外の風を感じながらコーヒーを飲んだ時間の方が不思議と印象に残っているんだよね」
そんな大川さんの写真は流れに身をまかせるような、のびやかな空気が漂っているように見えます。
北は礼文島へ、南は小浜島へと移り住みながら、たどり着いたのが小豆島
小豆島に来る前から島暮らしに憧れがあった大川さん。北海道の礼文島や、沖縄の小浜島で住み込みの仕事をしながら島暮らしをしていた時期もあったようです。沖縄の生活は楽しかったものの、生活費がかかったことから、一度別の島で働いてお金を貯めようと派遣会社に紹介されたのが小豆島。3ヶ月ほどお金を稼いだら、また沖縄に帰るつもりだったと言います。そんな風にたどり着いた小豆島の第一印象は、なにか物寂しさを感じるものでした。
「今まで行った島より山も海も遠く感じたんだよね。車もたくさん通っていて、そこまで田舎でもないし物足りなく感じたの」
多くの人は小豆島に来ると「海も山も近い」と感激するものですが、ほかの島を見てきた大川さんの目にはそうは映らなかったようです。
「職場の近くの浜辺を見つけて、一人で音楽を聴いたり、職場の同僚と飲んだり、空いた時間に足を伸ばしてみると、醤油屋さんがたくさんあることに気づいたり、じわじわ、じわじわ楽しくなってきた」
あっという間に3ヶ月が経ちましたが、結局、沖縄には戻らず、居心地が良くなってきた小豆島でそのまま暮らしてみることにしました。そのタイミングに一眼カメラで写真を撮るようになり、島の風景や、職場の同僚と浜辺で飲んでいる時などによく写真を撮ったのだとか。子どもや友達が楽しそうな笑顔をしている時にも、思わず写真が撮りたくなるという、大川さんが撮る人物写真はその人の自然体な姿が映し出されているように感じます。
写真の撮り方が変わると、いつもの島の見え方が変わる
小豆島カメラ結成前から、写真を撮るのが好きだった大川さん。小豆島カメラの活動でなにか自身に変わったことがあったか聞いてみました。
「みんなが撮る写真や、月1回の小豆島カメラのミーティングで刺激をもらってる。それぞれに魅力的で、自分も頑張ろうと思えるんだよね」
これまでオリンパス(現OMデジタルソリューションズ)の社員や写真家の先生が、小豆島に足を運び、小豆島カメラのメンバー向けに写真講座を開くといった機会を何度か与えてもらったこともありました。
「写真講座を受けて、写真の撮り方がぐっと変わり、すごい上手になったような気持ちになれたの。それまでPモード(プログラムオート)でしか撮っていなかったんだけど、Aモード(絞り優先モード)での撮り方や露出の変え方など、カメラの機能をもっと使えるようになったんだよね。太陽の光を意識するだけで、全然ちがう写真が撮れるとか」
「改めて講座などに通ってしっかりカメラを勉強し直したい」と大川さんは意気込みます。これまで小豆島カメラはカメラを借りるだけでなく、直接会って技術的なサポートを受けたことで、よりカメラに愛着が湧いたり、日々見ている島の日常への視点が変化したりすることができました。そして、それは長く活動をつづけていくことができた理由のひとつになっていると思います。
日常に旅での視点や時の過ごし方が溶け込む大川さん。カメラをともにした日々の中で、次はどんな時間を見つけるのでしょうか。OM SYSTEMとともに小豆島の日々を旅していきます。
文:坊野美絵
写真:大川佳奈子、坊野美絵
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