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カメラを携えて、醤油の世界を伝えていく - 黒島慶子

【わたしのまちとカメラ Vol.010 小豆島カメラ #004

小豆島で暮らす7人の女性が、小豆島の日常をOM SYSTEMのカメラで撮って伝えていく「小豆島カメラ」。メンバー同士でインタビューを行い、一人ずつ紹介していく連載の第3回目です。今回は「ケリー」こと黒島慶子さんを太田有紀が紹介します。
醤油ソムリエールとして、全国の醤油蔵を訪ね歩くことをライフワークとする彼女の肩には、侍の刀の如く、常にカメラが携えられています。写真を通し、醤油や蔵人の魅力を伝えて19年余になる黒島さんは「きれいな写真が一枚あれば、言葉を並べるよりも瞬時に多くを伝えられる。」と話します。
黒島さんが写真で伝えたいこと、その根っこにあるものを、言葉にしてもらいました。

【プロフィール】
黒島 慶子 Keiko Kuroshima
醤油ソムリエール及び醤油官能検査員。Webとグラフィックのデザイナー。撮影やライターも担う。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときから小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続け、デザイン、撮影、執筆、講座、レシピ作りなどを通じて良い醤油を結び続けている。高橋万太郎と共著の『醤油本』を出版。

表現技術のひとつとして出会った写真

黒島さんの写真との出会いは18歳。京都芸術大学の情報デザイン学科を専攻し、アニメーションやweb、立体造形など、表現に関するあらゆる技術を学ぶ中で、写真と出会いました。
学生時代のアルバイトは表現技術を磨く社会的機会と考えて、婚礼カメラマンの職についたの。カメラを何台も買って、レンズや機材も揃えて本格的に写真を始めた。フィルムカメラを使って、撮影後は職場の人たちとネガを囲んで3時間も反省会するような職場だった。同時期に大学の写真部にも入部して、ひと通り写真の撮り方も学んで。
徹底的に写真の技を磨く生活。学生だからできたことかもしれないけど、よくそこまで熱心に取り組めましたね。
小さい頃から勉強も運動も器用にできる方ではなくて、人一倍努力する質だったの。例えば、漢字テストの前日には家中に漢字を書いて貼って覚えて。それでもテストで1個しか回答できない、とか。
だから、『私はひとつに絞らないと』って知っているし、下手くそでもなんでも諦めずに突破口を探してきたかな。

黒島さんが生まれ育った、醤の郷の風景。
(黒島さんの投稿より)

地元・小豆島で見つけた自分のルーツとこれからの道

醤油蔵に焦点をあてて撮り始めたきっかけは、大学の卒業制作だったという黒島さん。
学生の集大成であるこの機会に、社会の役に立てる、自分にしか表現できないテーマを見つけよう!」と意気込んでいた折に『表現は自分が培ってきたものからしか生まれない』という内容の文章に出会い、自分のルーツとして、初めて地元小豆島と向き合い始めます。

そこで、日常的に何気なく目にしていた醤油蔵や木桶仕込みの魅力、バラエティの豊かさに気づき、
日本人の食卓に無くてはならない醤油。この個性はそれぞれの蔵人だからこそつくれる作品だ!これぞクリエイティブ!なんて意義深い!」と作り手の素晴らしさに感激しました。

発酵最盛期の醤油蔵。攪拌作業は重労働!
(黒島さんの投稿より)
道路を挟んで一体に広がる「マルキン醤油」
(黒島さんの投稿より)

しかし、そんな彼女に対して、醤油蔵は儲からないから続けられん、と口を揃える蔵人たち。
当時、全国の醤油を平等な立場で紹介する人はいなかった。消費者にいろんな醤油のことをもっと深く知ってもらえれば、醤油を選ぶきっかけがあれば。この日本ならではの手仕事を伝えていきたい。」そう思い、醤油蔵を紹介する活動を始めました。

卒業後、東京、香川と会社勤めをする傍であらゆる地域の醤油蔵を訪ね続け、2009年小豆島へ帰ると本格的に醤油ソムリエールとして始動。男社会の醤油業界で四苦八苦しながらも「本当にいいと思うものを伝えていく」という強い意志をもち、島から全国へ、また醤油から小豆島の豊かな食文化へ、活動の幅を広げていきます。
 
醤油はそれ単体で食べてもらえないからね。醤油を切り口に向き合うと、小豆島の面白いところ、すてきな生産者がどんどん見えてきて、宝探しのように掘れば掘るほど楽しくなった。
そう話す黒島さんの写真は、食の宝庫。住民でも普段なかなか出会えない場面がたくさんあります。

魚屋さんの大将
(黒島さんの投稿より)
素麺屋さんのこびきうどん
(黒島さんの投稿より)
搾りたてのオリーブオイル
(黒島さんの投稿より)
佃煮屋さん
(黒島さんの投稿より)


いつも励みになる【生産者と暮らしに出会う旅】

そんな、食の生産現場をよく知る黒島さんが中心となって開催してきたのが、【生産者と暮らしに出会う旅】です。

【生産者と暮らしに出会う旅】とは
小豆島の食にまつわる生産者を訪ね、その暮らしと美味しさを体験するツアー。OM SYSTEMのカメラを使って撮影を楽しみながら、醤油蔵、オリーブ畑、佃煮工場、塩屋、田植え、豊島など、生産現場を訪問したり体験したり。2011年から2019年までに8回開催しています。

生産者と暮らしに出会う旅vol.4
(黒島さんの投稿より)

生産現場を島外の人のみならず地元の人にも伝えられて、ファンを増やせて嬉しい。ツアーの集合写真がすごく励みになっているの。これまで続けてきた活動の先にこんなすてきな人達に囲まれて、みんな笑顔で、やってきてよかったと思えるから。

生産者と暮らしに出会う旅 vol.6 の集合写真
(黒島さんの投稿より)

そんな経験を重ねるなかで、カメラに対する感情にも変化があったといいます。
OM SYSTEMのカメラで撮る写真はフワッと女の子らしい印象で、醤油蔵を撮る時に欲しい雰囲気とは真逆だと思ってた。でも今は気にならなくなったかな。私が自分の表現をOM SYSTEMに合わせていくぞっという気持ち。なにより、このカメラを持っていると小豆島カメラのみんなが側にいる気がして頑張れるんだよね。
世界に一人だけの醤油ソムリエールという職業。普段は個人で活動するので、仲間がいる心強さを特に感じるそう。
 
ケリーちゃんは「好き」を見つけたら、これと決めて掘り進めて、どんどん大好きになっていく人。
これからも好きな食や人を、地元のことを、地元の人に好きになってもらいたい。そのきっかけを写真を通してつくっていきたい。
彼女の写真には「好き!素敵!伝えたい!」というまっすぐな想いが、そのまま強く表れている気がします。

ドレッシング作り。搾りたて無濾過のオリーブオイル、収穫ほやほやのレモン、醤油やもろみ、はちみつにマーマレード、酢や塩を舐め、気に入った物を混ぜて「おいしい!」を見つけていきます。このような食イベントをする度に、小豆島はなんて豊かでおいしい食材が多いんだろうと感動します。
(黒島さんの投稿より)
木桶職人復活プロジェクト
(黒島さんの投稿より)
小豆島で多種多様な調味料を作る「タケサン」の農園
(黒島さんの投稿より)

黒島慶子さんが使っているカメラ・レンズ
Camera:
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark Ⅱ
Lenz:
M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0
M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO
M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8
M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8

文:太田有紀
写真:黒島慶子、太田有紀

今回の取材で使ったカメラ・レンズ
Camera:
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark III
Lens:
M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8
M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8

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