秋は渡りの季節
暑い夏が過ぎ、外を歩くのも気持ちが良い秋。鳥たちにとって、秋は渡りの季節です。渡りというのは、春と秋に起こる鳥たちの移動のことで、秋は北から南へ、あるいは高地から低地へ、という方向に移動します。夏の間に涼しいところで子育てを終えた鳥が、温暖な場所で冬越しするために移動するのです。
平地に暮らすバードウォッチャーにとっては、夏の間は山へ遠出しなければ会えなかった夏鳥たちが、日本を去る前に身近な場所を通過していくという、とてもワクワクする季節です。都市公園でも、コツさえ掴めば、キビタキやサンコウチョウなどの夏鳥を発見することができます。もちろん、環境が変われば鳥も変わるので、例えば干潟ではシギ類やチドリ類が見られますし、河川敷の草原ではノビタキが定番です。
この時期、SNS等では種々の鳥たちの情報が流れてくることでしょう。しかし、似た環境があれば、鳥たちは利用します。インターネットの情報だけに縛られず、身近な場所にも通うことで、季節の変化を感じることもお勧めです。
シジュウカラの群れに気をつけよう
一年を通して大きな移動をせず、同じ場所に留まる鳥を「留鳥」と言いますが、秋の平地で夏鳥を探す時には、その代表格であるシジュウカラを目印にします。渡りの途中、短期間だけその場所に滞在する渡り鳥たちは、その土地のことをよく知る留鳥と行動を共にすることがよくあるからです。秋にシジュウカラの群れを見かけたら、しばらく観察してみると、同じく留鳥であるヤマガラやコゲラに混じって、センダイムシクイやキビタキ、サンコウチョウなどの夏鳥が姿を現すことでしょう。このような、複数種が混ざる群れを「混群」と呼びます。群れのメンバーは日々、変化しますから、継続的に観察すると、季節の変化や発見する楽しさを感じられることでしょう。
待ち伏せてみよう
鳥たちは、その場所に来る理由があれば、一度そこを去っても繰り返し戻ってきます。例えば、よい見張り場である、好物の木の実がなっている、水場になっているなどが該当します。そのような場所を見つけられたら、じっくりと待ち伏せてみましょう。携帯椅子も便利です。ただし、近くまで様子を見に来るけれども、引き返してしまうようであれば、観察者の存在が、鳥の「自然な行動」を妨げてしまっている可能性があります。もう少し離れたところで待つようにするか、物陰に身を隠すなどの対応をしてみて、それでも効果がなければ撮影はあきらめましょう。
予想通りに鳥が戻ってきても、焦りは禁物です。実を食べにきたのであれば、実を食べ始めるまでは警戒心が強いので、レンズを向ける動作は避けます。水場であれば、水飲みや水浴びを始めるまで待ちます。そうすることで、鳥も目的を果たすことができますし、結果的に撮影のチャンスも失わずに済むのです。
晴れた日はタカ類を探そう
晴れた日には、タカの仲間が空を渡っていく様子を見ることができます。西へ伸びた岬や、上昇気流のおきやすい山間などのポイントでは通過する数も多く期待できますが、実は身近なところでも、ふと見上げた空に渡るタカを見つけることも少なくありません。
タカ類を見つける時には、ほかの鳥の反応を気にすると良いでしょう。多くの鳥たちにとって、タカ類は天敵であり、怖い存在ですから、何かしらの反応を見せます。もっともわかりやすいのは、カラス類の反応で、大きな声で鳴きながら、テリトリーから追い出そうと攻撃を仕掛けにいきます。シジュウカラ などの小鳥類は、鋭く短い声を出して、群れの仲間に危険を知らせます。上述したような「混群」でも、種類の垣根を越えて警報を共有します。
渡りの安全を祈ろう
なかなか実感が湧きませんが、例えば身近なツバメも、あの小さな体で海を越えていきます。シギ類に至っては、日本を飛び立ったらそのまま一気にオセアニアまで海上を渡っていくものもいます。秋の渡りで、日本に立ち寄るのは、そんな壮大な旅の途中、体力の回復と、旅の準備をするためなのです。
ですから、撮影の際には、休息や採餌の邪魔をなるべくしないよう、無闇に追い回さないようにしたいものです。そうすれば、渡りがうまくいき、また来年、出会えるかもしれません。いつまでも野鳥撮影が楽しめるよう、思いやりを持って撮影させてもらいましょう。
写真・文:写真家 菅原貴徳
野鳥撮影のマナー・注意点
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