タロイモの七転八起大陸自転車横断記#02 ポルトガル編
2023年4月8日にリスボン近郊のロカ岬を出発し、ついに東へとペダルを踏み始めました。今回は4月15日にスペイン国境へ到達するまでの記録です。
リスボン観光、そしてシントラ
私がポルトガルに到着したのは4月4日でしたが、続く二日間をリスボンとその近郊にある世界遺産の街シントラでの観光に費やしました。
リスボンの街はテージョ川の河口に位置し、斜面に街がへばりつくように成立しているため坂の多さはさながら長崎市のようです。そして坂の多い街は景色がよいものです。石畳の坂道を、息を切らしながら登って行って、ふと後ろを振り向くと必ずそこにははっと息をのむ景色があります。リスボンはそんな魅力にあふれた街でした。
シントラはリスボンから車で一時間ほどの場所に位置する、日本でいうのならば京都に相当するであろう街です。王宮などが多く位置し、一大観光地として成立しています。残念ながら最も有名なペーナ宮殿はストライキのため閉鎖されていましたが、そのほかにも見どころの尽きない街でした。こちらもまた丘陵地帯にある街で、豊かな起伏が景観に花を添えています。
大陸最西端の地、ロカ岬
愛車のペダルを漕ぎ始めたのは、二日間の観光を終えた翌日の4月7日昼過ぎになってからでした。それまで経験したことのないあまりの重さと空気抵抗に、東京までのはるかな道のりへ思いを巡らせたことも加わり正直なところ狼狽しましたが、きっとこの重量に慣れる日が来ると自分に言い聞かせ先へ進みました。
リスボンから10km弱進んだところにあるベレンの塔へ立ち寄ったのち、横断旅行の出発地点であるロカ岬の手前まで鉄道で移動しようと思い駅へ向かったのですが、券売機はすべて故障、鉄道はどうやらストライキで運休といろいろなことが重なり、全く思い通りにいきません。その後1時間遅れでなぜか列車が来たので無事終点の駅まで行くことができましたが、既に日没が迫りつつありました。
終点のCascais駅からロカ岬までは僅か15kmほどでしたが、起伏に富むこともあって始めたての人間には非常に堪えました。途中岬のすぐ手前でフランス人の老サイクリストと出会い、残りの道は彼と一緒に走りました。ちょうど日没寸前に岬へ着き、ユーラシア大陸最西端の地から大西洋に沈む夕陽を観た後は二人で岬の一角にテントを張り、就寝しました。この大旅行のスタートとして、これ以上ない最高のものでした。
中世の街、オビドス
4月8日にロカ岬を出発してからは約300km先のアヴェイロを一路目指したのですが、その途中では自転車旅行ならではの発見や風景に恵まれました。特にここで紹介したいのはオビドスという町で、リスボンから北に100kmほどの場所に位置しています。
オビドスは中世の城塞都市の構造が非常によく保存された町で、城壁から向かいの丘に向かって伸びる水道橋までもが保存されています。私はこの町について何も知らなかったので走行中にたまたま通りがかっただけなのですが、それでもその美しさに惹かれて立ち寄ることを決めました。
町は城壁内の隅から隅まで非常によく保存・維持されており、レストランや宿泊施設も豊富です。私の中では、ポルトガルを訪問した中で一番の場所です。
山を越えてスペインへ
オビドスを訪問したのはロカ岬を出発した翌日の4月9日でしたが、10日にアヴェイロへ到達後一日休憩を取り、その後スペイン国境の前に立ちはだかる山岳地帯へと向かいました。アヴェイロでは、リスボンに滞在中知り合った同年代の学生の家に二泊させてもらったのですが、こういった出会いもまたかけがえのない旅の楽しみです。
ポルトガル・スペイン国境の山岳地帯は、日本の基準で言えば正直なところ大したことはなく、ちょうど中国山地くらいの険しさなのですが、なんといっても重い自転車にまだ慣れきっていない身体には堪えました。ちょうど寒気が押し寄せてきたこともあり、疲労と寒い中の野宿で一度体調を崩したりもしましたが、何とか持ち直し4月15日正午過ぎに、ポルトガル側のVilar Formosoからスペインへ無事入国しました。
文・写真 森本 太郎
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