Vol.1「どこにでも持って行けて、最高の瞬間が撮れる」そんなカメラが作りたかった!
OM SYSTEMを生み出すモノ作りの裏側「ビハインドストーリー」を社員が語るシリーズ第3弾では、コンパクトなボディーに高画質と高性能を兼ね備え、唯一無二の撮影体験を提供する「OM SYSTEM」のフラッグシップモデル「OM SYSTEM OM-1」(2022年3月発売)を取り上げます。商品開発を手掛けた一寸木(ますぎ)達郎さんとプロダクトリーダーを務めた西原芳樹さんが開発秘話を語ってくれました。
■話し手:一寸木達郎(写真左・ELシステム開発2ディレクター)西原芳樹(写真右・製品開発1 ディレクター)
■聞き手:柴田 誠(フォトジャーナリスト)
目指したのはカメラとしての「最高の道具」
−ズバリお伺いしますが、「どんなカメラ」を目指して OM-1の開発をされたんでしょうか?
西原:開発陣としては、カメラとして「最高の道具であること」を目指しました。具体的には「どこにでも持って行けて、最高の瞬間を逃さず思い通りの画が撮れる」ということを目標にしました。撮影者がカメラを持って目的の場所に辿り着けなければ意味がありません。そのための携帯性とタフ性能を備えるようにしようと考えました。
−具体的にはどんなシーンを想定していたんでしょう?
西原:砂が舞う砂漠だったり、極寒の地に持って行けて、なおかつカメラがちゃんと動いてくれないと撮影ができないわけです。周りに何もないような場所では、バッテリーをどうするんだっていう問題も出てきます。地球上のどんな場所でも撮影できるカメラでなければと思っていました。
−防塵・防滴性能を含めて狙い通りのカメラになったんでしょうか、そのあたりをもう少し教えてください。
西原:防塵・防滴性能では、防塵・防水等級 IP53の規格をクリアしました。大雨にも耐えられる防水性能に加えて、ホコリの侵入も防げる仕様になっています。
−これまでのOMシリーズのカメラとはどんな点が違うんでしょう?
西原:OM-1では、IP53に対応するために、マグネシウム合金ボディーの適所に配置しているシーリング部材の素材の見直しや、シーリング部品の重ね方も工夫し、防滴性能を向上させました。
−今までの開発の延長というわけでなく、いろんな工夫によって防塵・防滴性能をアップさせているんですね。テストはかなり過酷なものだったんでしょうか?
西原:防塵テストでは、ベビーパウダーのような粉を8時間浴びせ続けてホコリの侵入がないことを確認しました。また、防水テストでは、水辺で撮る条件を想定して、保障外ではありますが、ボディーを水没させるなど、あえて過酷な条件で性能を見ることでボディーの弱点を見つけたりと、かなりストイックに実験と対策を繰り返しました。ちなみに耐低温性能の確認には、大きな冷蔵庫のような試験室の中での動作を確認したりして凍えそうになったりと、カメラのタフさが増すほどに開発の試験も過酷になります。
こちらの動画は、防滴試験の様子。
軽量化のために1つ1つの部品を見直して目標の600g以下をクリア
−防塵・防滴性能はワンランクアップしたのに、大きさや重さはそんなに変わっていませんよね?
西原:ええ、外装を強くすれば防塵・防滴性能は上げられるんですけど、それだと大きく重くなってしまいます。今までと同じ設計をした場合、シミュレーションではOM-D E-M1 Mark IIIに比べておよそ50gほど重くなることが想定されました。それだとカメラとして使いづらいので、30gダウンの600g以下、599gにすることを目指しました。
−このサイズのカメラで30g減らすというのは相当大変でしょう?
西原:そうなんです。機能や性能を確保しながら30g減らすっていうのは簡単なことではありません。そこで0.5g以上の部品をリストアップしたら、62個あったのですが、そのすべてを対象に徹底的に軽量化することにしました。
−0.5gの部品をさらに軽くしようってことですか?
西原:はい。例えば、背面の液晶モニターの強度部材では、ビスの固定方法を変えたり、強度の必要な部分をシミュレーションして、その部分だけを残すなどして、重量を45%減らしています。
−性能を維持しながら地道に1部品ずつ見直したんですね。
バッテリーにもひと工夫して「電池寿命1000枚」を実現
−確かにOM-1は、どこにでも持って行けそうなタフなカメラに仕上がっているようですけれど、そこで撮るにはバッテリーが欠かせませんよね。バッテリーにはどんな工夫が施されているんでしょう?
一寸木:プロのカメラマンのお話を聞いていくと「1000枚は撮りたい」というリクエストが多かったので「電池寿命1000枚」を目標にしました。実際にはバッテリーグリップを装着して、バッテリー2個で「電池寿命1000枚」を実現しています。
西原:また、バッテリーグリップをつけると安定感がないというような意見も聞かれたので、今回、ガッチリ装着できて一体感がでるような設計にしています。
−バッテリーはそこそこ重量があるので、数を減らせるものなら減らしたいものです
一寸木:私たちもバッテリーの数を1個でも減らすことができればと考えました。そうすればもっと遠くに、もっと環境の厳しいところに行けるわけなので、バッテリー寿命を今以上に伸ばせないかというのを検討しました。
−バッテリーは従来と同じものではないんですか?
西原:OM-1では大容量のバッテリー(BLX-1)を新しく採用しました。バッテリー1本で520枚撮影が可能で、ボディーとパワーバッテリーホルダーの同時充電、さらに充電しながらのカメラ動作もできます。また、PD規格に対応したモバイルバッテリーからの給電など、充電と電源供給の多様化に対応し、いろんな方法で撮影を継続できるようにしたいと考えました。
−OM-1の開発秘話にはまだまだ続きがありそうですね。この後も楽しみです。
#創るをツナグ OM SYSTEM OM-1開発ストーリー は、「Vol.2 コロナ禍や分社化を乗り越えて誕生したフラッグシップモデルOM-1」に続きます。