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世界の美しさに気づけるレンズ を開発した話〜M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PROレンズ 前編

#創るをツナグ Vol.1

OMデジタルソリューションズは、「M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO」(以下90mmマクロレンズ)を2023年2月24日に発売しました。モノ作りに込めた思いと開発ストーリーを社員が語るシリーズ「#創るをツナグ」の第1弾「90mmマクロレンズ前編」では、レンズ開発のこだわりとぜひ皆さんに知ってほしい推しポイントについて光学設計を担当した横山さんが解説します。

「今まで撮れなかった世界を捉えたい」から生まれた90mmマクロレンズ

マクロ撮影の面白さは身の周りのものが全く違って見えること

マクロ撮影とは、小さな世界を拡大して大きく写す撮影方法です。マクロレンズは通常のレンズよりも被写体に近寄って、大きく撮影することができるレンズです。マクロ撮影の面白さは、「人の目で見た姿と違った絵が撮れる」ということです。日常的に見慣れたものも、マクロレンズを通して覗いてみると、違った世界が見えてきます。

下の3つの写真は、90mmマクロレンズと2倍テレコンバーターMC-20で撮影しました。身近にあって普段見慣れているものが、こんな風にまるで違ったもののように見えるのがマクロ撮影の面白さだと思います。

左:90mmマクロレンズで撮影したイチゴの表面です。ツルッとしたように見えるイチゴですが、4倍に拡大して見てみると、ザラザラ、ゴツゴツとした表面 
中央:普段、私が仕事で使っているシャープペンシルの芯(0.5mm)
右:台所にあった食塩を撮影したもの

虫眼鏡を持って走り回っていた頃の高揚感を感じて欲しい

90mmマクロレンズは、35mm判換算で180mm相当の望遠マクロレンズで、レンズ単体で8.7mmx6.5mmの範囲が画面いっぱいに撮れる最大4倍(35mm判換算)まで、別売の2倍テレコンバーターMC-20を装着すればさらに4.3mm x 3.3mmが画面いっぱいに撮れる最大8倍(35mm判換算)までの超高倍率マクロ撮影ができるのが大きな特徴です。90mmマクロレンズは、高倍率撮影用レンズとしては他にはない、唯一のレンズだと言えるでしょう。

米粒も画面いっぱいに撮影できます*M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO+MC-20使用

補足:マクロレンズの撮影倍率とは?
等倍撮影ができるマクロレンズ:センサーサイズと同じサイズの被写体を画面いっぱいに撮れるレンズ。
フルサイズセンサー(35mm判)の場合、センサーサイズと同じ約36.0mm × 24.0mmの大きさの被写体を画面いっぱいに撮影できる性能になります。
マイクロフォーサーズ(OM SYSTEM)の場合、センサーサイズと同じ17.4 mm x 13.0 mmの大きさの被写体を画面いっぱいに撮影でき、フルサイズと比較して、1/2の範囲を大きく撮れることになります。
マイクロフォーサーズ(OM SYSTEM)の撮影倍率2倍は、8.7 x 6.5 mmの被写体を画面いっぱいに撮影でき、撮影倍率が大きいほど、被写体を大きく写すことができます。

肉眼を超えた視覚は新鮮です。普段見ているのとはまったく違う世界が見えると言ってもいいでしょう。私は、このレンズで撮影する人に虫眼鏡を手にして走り回っていた子供の頃の高揚感を感じてもらいたいという想いで開発しました。

これまで撮影できなかった新たな撮影領域の開拓を目指した

当社のカメラシステム「OM SYSTEM」には、ハーフマクロと呼ばれるような実物の半分の大きさで捉えることができるレンズがいくつもあります。それでも充分大きく撮影できます。また既にマクロレンズとして定評のある「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」「M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro」もあります。さらに他社には、マニュアルフォーカス(MF)で高倍率撮影ができるマクロレンズや等倍まで撮影できる望遠マクロレンズもたくさんありますから、「私たちならどんなレンズにできるのか」ということを考えました。最終的に私たちは、「AF(オートフォーカス)ができる高倍率のマクロレンズに価値がある」というところにたどり着き、半年以上の構想期間ののちに開発をスタートさせました。私たち90㎜マクロ開発チームは、一般の撮影用レンズでは撮影が難しかった新たな撮影領域の開拓を目指したのです。

補足:ハーフマクロとは?
一般的に、フルサイズセンサー(35mm判)の2倍の範囲、
約72.0mm×48mmの被写体を画面いっぱいに撮影できるレンズをハーフマクロといいます。OM SYSTEMには、9本のハーフマクロと呼べるレンズがラインナップされています。

「欲しい、使ってみたい」と思ってもらえるようなマクロレンズを目指して

マクロレンズはフィルムカメラ時代にはOMの代名詞だった。
それを超えたい。
世の中を驚かせたい。

私たち90㎜マクロレンズ開発チームは、「このレンズだから見える新しい世界」を開発メンバー全員が実感を持って開発を進めていくためにフィルム時代の高倍率マクロレンズを引っ張り出して野山に出かけ、様々なものを撮影を繰り返し、このレンズに確信と自信を持ったのです。

左:テスト撮影の様子
右:試し撮りに活用した往年のマクロレンズ

またこのレンズの開発に当たっては、PROレンズとしての高い光学性能と高倍率のマクロ性能を軽量コンパクトなボディに収める必要がありました。等倍まで撮影できればもう充分と考えるユーザーも少なくないでしょうし、大きく写すことができるレンズにしようとすると、どんどん大きくなってしまいます。開発チームは、この難題を乗り越え、「このレンズがあるからOM SYSTEMを使いたい」、そう思ってもらえるようなレンズを目指しました。

高い描写性能だけでなくボケの描写にもこだわった

この90mmマクロレンズは、特殊レンズをふんだんに使った光学系を採用しています。マクロ撮影だけでなく(35mm判換算180mm相当)の望遠レンズとしても安定した高い描写性能を実現するためです。またシャープでクリアな画質だけでなく、ボケの描写にもこだわりました。さまざまなレンズを効果的に組み合わせることで、色のにじみを抑えたきれいなボケを実現できています。

「M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO」だからできること

「コンピュテーショナルフォトグラフィ」でマクロ撮影の表現が広がる

通常撮影よりも被写体にグッと接近して撮影するマクロ撮影では、ピントが合って見える範囲(被写界深度)が極端に浅くなります。絞りを絞ることである程度被写界深度を深くすることができますが、それも限界があります。そこで便利なのが、ピント位置をずらした複数枚の写真を合成して、手前から奥までピントの合った被写界深度の深い写真を簡単に実現する「深度合成」という方法です。

これまでの撮影技術では実現できなかった表現をデジタル処理技術によって実現したものを「コンピュテーショナルフォトグラフィ」と呼んでいますが、こうした機能に対応したことで90mmマクロレンズは、これまで撮影できなかったマクロの世界、新しいマクロ表現ができる可能性が大きく広がりました。90mmマクロレンズは、自動的にピント位置を変えながら連続的に撮影する「フォーカスブラケット機能」に対応。更に「深度合成」に対応したカメラであれば、複雑な操作をせずにカメラ内で1枚の画像に合成することができます。

手持ちで高倍率のマクロ撮影ができる

手ぶれ補正やレンズの軽量化といったレンズ開発の技術的なポイントについては、後編で、90mmマクロレンズの開発リーダー 弓削さんに詳しくお話してもらいます。また、よりきれいにマクロ撮影をするために自作したディフューザーも紹介します。

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