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北山輝泰 写真展「星を巡る」インタビュー

日本大学芸術学部の写真学科時代に星景写真と出会い、その後、福島県鮫川村に移住をして天文台でインストラクターを務め、天体望遠鏡メーカーに就職。2017年に独立をした北山輝泰。今回は2019年から2023年まで全国を巡って撮影した写真を中心に24点を展示しました。展示作品や今後の目標について聞きました。


星景写真の魅力を伝えたい

――さまざまな種類の星景写真が見られる写真展ですね。

まさにそれが今回の写真展のコンセプトです。望遠から超広角までさまざまなレンズで撮影したものや、手持ち撮影したものなど、見てくれた方がそれぞれに何か引っかかるものがあればいいなという思いがあり、いろいろな写真を選びました。都心の夜景や月など、「これなら自分も撮れるかも」と気付くきっかけになってくれたら嬉しいです。

――撮影場所はどのように選びましたか?

写真家として独立する前に天体望遠鏡メーカーのビクセンで営業をしていたのですが、全国各地へ出張に行った際、有給休暇を組み合わせて、いつかここで撮りたいとロケハンしていたんです。抜けのいい草原や、奇岩がある海など、方角を確認してストックしていた場所を、いま巡っています。

営業をしていた頃は、星が好きではない人にも天体望遠鏡に興味を持ってもらうために、「星空って素晴らしいですよ」と語るだけではなく、自分で撮った写真を一緒に観てもらっていました。そのほうが共感してもらえるんですよね。「変な営業」ってお客さんによく面白がってもらっていました(笑)。


星の巡りを計算して撮りに行く

――展示作品について教えてください。

入ってすぐの壁は、自己紹介を兼ねて自分らしい写真を4点展示しました。

写真展のDMにも使用した都市星景は、ライブコンポジットで撮影した写真です。虎ノ門ヒルズや六本木ヒルズ森タワー、東京タワーなど代表的な都心のシンボルが写る夜景に、私の好きな春の星座、大熊座の北斗七星としし座が昇るタイミングをねらって撮りに行きました。右下にある人家と都市風景との対比も見せたくて、星景写真でよく使われる3分割構図ではなく、2分割構図で撮っています。

星の下で生きる
“Living under the stars”

2枚目の写真は、天の川と金星と火星と月が写る、もう二度と撮れない星と惑星と月の饗宴です。厳密にいうと2054年に似たような星の巡りはあるのですが、完全なる同じ並びは100年以上先。私はそのようにシミュレーションをして撮りに行く写真家なので、その紹介を兼ねて展示した1枚です。

星たちの饗宴 
“Feast of the stars”

次の写真は、僕が仕事として撮影しているもう一つの被写体、ロケットの打ち上げの写真です。H2A45号が種子島から打ち上がる様子を鹿児島市内から撮りました。ロケットの発射する角度、方位角、スピードなどを三次元的に計算すると、どのような放物線を描くかが分かるので、それで画角を決めて撮った写真です。

旅立ちの夜
“The night of departure”


カメラがもたらす新しい可能性

――他にもいくつか作品について教えてください。この写真は土星の環が写っていて面白いですね。

OM SYSTEMのM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400㎜ F4.5 TC1.25x IS PROを使って東京スカイツリーと一緒に撮りました。このレンズは1.25倍のテレコンバーターが本体に内蔵されているので、1000㎜相当で撮れるんです。これまでの経験で1000㎜あれば土星の環が写るというのはわかっていたので、荒川の土手から撮影しました。土星はとても小さく写っているので、初日に写真展を観に来てくださった方が、一度帰って虫眼鏡を持ってまた来てくれたのが嬉しかったですね。

落ちていく土星
“Saturn is descending”

――船の上からの写真もありましたが、撮影はいかがでしたか。

大阪から新門司港へ行くフェリーで撮りました。船の上は三脚を立ててもブレてしまうのでこれまで星を撮るのは難しかったのですが、手ぶれ補正機構が強力なOM SYSTEMのカメラのおかげで撮れるようになりましたね。手持ち撮影だとアングルの自由もききますし、ここまで撮れるとは驚きました。新しい作品が撮れる可能性を感じた写真です。

オリオンを背に船は進む
“The ship sails against a backdrop of Orion”

――奥の壁にある2枚並んだ天の川の写真の違いも印象的です。

左はチリで撮影したもの、右は日本で撮影したものです。天の川の銀河系の中心部分、一番華やかなところが、南半球だと真上にくるのですが、北半球は緯度が低いので、ちょうど目線の高さぐらいにあるんです。だから日本だと風景と一緒に撮れるんですよ。これを撮りたいと海外から日本に来るカメラマンもいるくらい、実は貴重な風景なんです。


いつか宇宙に行くために

――写真展のタイトル「星を巡る」には、どのような思いが込められていますか。

展望施設のSHIBUYA SKYから渋谷スクランブル交差点を見ていた時に、人間の動きって規則的だなと思ったことがあったんです。信号が青になったらみんな一斉に歩き出しますよね。朝起きてから夜寝るまでの営みも、ほぼ同じような毎日を過ごしています。そして星も当たり前のように、規則的。すごく遠い場所にある星々と自分たちの日常は、どちらも規則的に巡るものだと、再認識した瞬間がありました。

一方で惑星は、毎年同じ季節に同じ場所で観られるものではなく、異端児みたいに変な動きをします。人間もそういう人、いますよね(笑)。だから惑星の写っている星景写真も面白いなと思って撮影しているんです。また、「巡る」には「一度回って元いた場所に戻ってくる」という意味があり、この写真展を一つの着地点とし、また新たな10年を歩んでいきたいと思って、このタイトルを付けました。

頂きから見る景色
“Night view from the summa”

――今回の写真展を経て、次の10年に向けた目標があれば教えてください。

これまでの10年間、真剣に取り組んできたことで、星景写真の本当の面白さや、自分にしか撮れない写真が何かわかってきました。これからも星景写真を続けますが、その次に向かう先を考える中で、ロケットの撮影にも力を入れて行きたいと思っています。

私は10回以上、種子島に通って打ち上げの瞬間を見ていますが、何度見ても泣いてしまうんです。人間が作り上げたロケットが遥か遠い宇宙にたどり着くなんて、すごいことだと思うんですよ。

今後は民間も参入することで打ち上げ回数も増えて、宇宙がもっと身近になる未来がやってくると思います。そうなれば、いつか自分も宇宙へ行く道が開けるかもしれない。宇宙から地球を見たり、今まで撮っていた星や惑星を見られたりしたら、僕の人生は完結する気がするんですよね。それまでロケットカメラマンとしても頑張りたいと思っています。


写真展開催期間中に開催されたトークショー


文:安藤菜穂子
写真:竹中あゆみ


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