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Limelight Under40 部門 受賞作品展インタビュー ~ 三浦エリカ写真展「半水面写真展〜まだ見ぬ日本を探して〜」~

「Limelight」は、OM SYSTEM PLAZAが主催する、若手写真家支援を目的とした公募展。第1回「Limelight」は、2022年8月1日~9月30日の間募集され、39歳以下を対象にした「Under40部門」、29歳以下を対象にした「Under30部門」の2部門が設けられ、Under40部門がOM SYSTEM GALLERY(旧オリンパスギャラリー東京)で、Under30部門がOM SYSTEM PLAZA クリエイティブウォールで、いずれも2023年2月16日(木)~2月27日(月)の間、受賞作品展が行われました。

沖縄県那覇市でダイビングインストラクターとして活動した後、現在は石垣島を拠点に全国各地を巡りながら、水中と陸上を一緒に写した「半水面写真」を制作している三浦エリカさん。写真を始めたきっかけや若手写真家支援写真展「Limelight」で受賞した作品について、今後の活動についてお話を伺いました。

三浦エリカ / Erika Miura
1990年横浜生まれの半水面写真家。慶應義塾大学卒業後、テレビ局へ就職。その後、沖縄へ移住し、ダイビング沖縄県那覇市のマリーンプロダクトにてインストラクターとして働きながら写真家・清水淳氏の元で水中写真を学ぶ。海の生物や水辺の風景などの水中写真を撮影していたが、半水面写真の魅力に気づき、現在では半水面を専門に撮影している。石垣島を拠点としながら、まだ見ぬ景色を求め日本各地で活動中。2022年開催のOM SYSTEM GALLERY「Limelight」Under40部門にてグランプリ獲得。
三浦エリカHP


ダイビングインストラクターをしながら学んだ水中写真

――まずは三浦さんが写真を始めたきっかけを教えていただけますか。

もともと旅をすることが好きで国内外いろんな場所を訪れていたのですが、ただ観光地に行って帰ってくるだけではなく、何かテーマを持って写真を撮り、発信することができたらいいなと考え始めたのがきっかけです。自分が伝えたいことは何だろうと考えたときに、ダイビングが好きだったので、水中写真をやってみようと思いました。それから沖縄に移住して、ダイビングインストラクターとして働きながら水中写真を勉強し始めたんです。2年ほど学んだ後、拠点を石垣島に移し、現在は写真家として活動しています。

――若手写真家支援写真展「Limelight」に応募した経緯を教えてもらえますか。

東京で写真展をやりたいという思いがあって公募展を探していたところ、たまたま見つけたのが「Limelight」でした。ふだん、OM SYSTEMのカメラOM-D E-M1 Mark IIと8㎜のフィッシュアイレンズを使っていることもあります。受かった時は「やったー!」という感じで、すごく嬉しかったですね。

水中と陸上を1枚で写す「半水面写真」とは?

――展示タイトルにもなっている、「半水面写真」について教えていただけますか?

「半水面写真」は、合成などを行わずに、カメラのレンズを半分だけ水に沈めて水の中と陸上の風景を1枚に写す写真のことを言います。

ダイビングをしている方で「半水面写真」を撮られている方は他にもいるのですが、よく見る「半水面写真」は浅瀬のビーチや海に浮かぶ船など、きれいな海辺の景色を中心に捉えているものが多いように感じていました。そこで水の中にも被写体を入れることで、海の中で暮らす生物が住んでいる環境を、自然の景色の広がりなどより多くの情報と共に伝えられると気づいて撮り始めました。

海を訪れる機会の少ない人にも、身近な場所でこういう景色が広がっているんだと感じてもらいたくて撮影した作品です。

絶滅危惧種に指定されているアオウミガメだが、日本では浅いビーチでも出会うことが出来る。
沖縄県 座間味島

――撮影のコツはありますか?

深水2m以内の浅い場所のほうがきれいに写るので、それぐらいの範囲にいる被写体を狙います。カメラのレンズの下半分を水中にいれて上半分を外に出して撮るのですが、上に出ている部分に水滴がついてしまうので、1回カメラを全て水中に沈めて持ち上げたときに薄い水の膜ができる1、2秒の間に撮っています。沖縄県のナガンヌ島で撮影したロクセンスズメダイの写真が初めて「半水面写真」を写した1枚ですが、試行錯誤しながらひと夏かけて撮影しました。

体長10cmほどのロクセンスズメダイが、レンズにぶつかりそうなくらい近くに集まってきた。
沖縄県 ナガンヌ島

――このマンタの写真も、口の中まで見えてすごいですね。

マンタは冬の間だけプランクトンを食べに水面に集まってくることがあるので、運がよければ見られるんです。この時は船も一緒に写したいと思ったので待っていたら、たまたま運よく現れて、撮ることができました。

大きな口を開けてプランクトンを捕食するマンタ。冬の時期だけ水面にご飯を食べにやってくる。
沖縄県 黒島

海の中での一期一会で撮る

――撮影に苦労した写真や、特にお気に入りの1枚を教えてください。

御蔵島のイルカの作品ですね。2匹が仲良さそうに泳いでいる写真です。イルカにはそれぞれ個性があって、早く通り過ぎて行く子もいれば、こちらに向かってきてくれる子もいる。いろんな子がいて撮影はすごく楽しいのですが、他の生物に比べて泳ぐのが早く、自分自身も泳ぎながら撮るのでタイミングが難しいんです。

サンゴなど動かない生物なら気のすむまで撮れますが、動く生物は一期一会。一度過ぎ去ってしまったら次いつ会えるかわかりません。イルカと出会ったタイミングに、よい波や光の向き、天候、そして島がちょうどよく写る距離感などが一致して、たまたま撮れた1枚です。自然はこちらで計算やコントロールができないので、偶然性があって面白いですね。

300人ほどが暮らす御蔵島の周辺には、100頭以上もの野生のミナミハンドウイルカが住んでいる。
東京都 御蔵島

私たちが生きている場所は、海や川とつながっている

――展示構成はどのようにされましたか?

導入はスタンダードな「半水面写真」を2枚見てもらったあと、被写体や時間帯を変えていろんなバリエーションを見ていただくようにしました。

そして奥のゾーンでは、海と人との関係が分かる写真を選んでいます。以前、使われていた船が水中に沈んで自然と一体化し、その水上には現役の船が浮かんでいる写真や、人工物に囲まれた場所で産卵しているカブトガニ、人が暮らす街のそばにいるクラゲの写真などです。

一番左の写真は健康なサンゴで、その隣は温暖化などが原因で白化してしまったサンゴ。白くなったサンゴは幻想的で美しいと言われたりもしますが、実は死に瀕した危機的な状況なんです。

――展示を経て気づいたことや、お客さんの反応はいかがでしたか?

こんなに大きな会場で、大きなプリントを展示するのは初めてだったので、いつも画面で見ている写真と印象が変わりました。お客さんの反応は、普段、あまり海に行かない人にとっては、2つの世界を一緒に写していること自体に驚いて、「海を感じられました」と言ってくださる方が多かったです。ダイビングをやっている方も、川や湖で写した写真は見たことがないとおっしゃる方が多く、海を知らない人にも、知っている人にも楽しんでもらえたのが嬉しいです。

――ありがとうございます。では最後に、今後の活動について教えてください。

まだまだ知らない場所がたくさんあるので、日本各地を訪れて撮影を続けながら、海外にも行ってみたいです。日本にはいない生物や「半水面写真」だからこそ伝えられる写真を撮ってみたい。実現可能かどうかは想像もつきませんが、いつか、南極の海を潜ってみたいです。南極大陸と海と、ペンギン…。夢は膨らみます(笑)。

文・安藤菜穂子
写真・竹中あゆみ

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