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Limelight Under30部門 受賞作品展インタビュー ~ 山田安海写真展「ここで 生きるひと、まとう空間と陽」 ~

「Limelight」は、OM SYSTEM PLAZAが主催する、若手写真家支援を目的とした公募展。第1回「Limelight」は、2022年8月1日~9月30日の間募集され、39歳以下を対象にした「Under40部門」、29歳以下を対象にした「Under30部門」の2部門が設けられ、Under40部門がOM SYSTEM GALLERY(旧オリンパスギャラリー東京)で、Under30部門がOM SYSTEM PLAZA クリエイティブウォールで、いずれも2023年2月16日(木)~2月27日(月)の間、受賞作品展が行われました。

フィルムカメラのOLYMPUS PEN EE-2で何気ない日常のかけがえのないシーンを撮影し、若手写真家支援写真展「Limelight」Under30部門を受賞した山田安海さん。写真を始めたきっかけや受賞した作品について、今後の活動についてお話を伺いました。

山田 安海 / Ami Yamada
愛知県出身。デザイン事務所等に勤務したのち、現在は写真家・陶芸家・デザイナーとして活動中。日常や風景を切り取り、やわらかさや、やさしさを通してずっと眺めていたくなるような、安らぎを感じる写真を制作しています。Instagram:@ami.yamada

OLYMPUS PEN EE-2との出会い

――今回の受賞作品「ここで 生きるひと、まとう空間と陽」について教えてください。

日常の中で忘れがちだったり、見逃しがちだったりはするけれど、思い返せば本当は大切なシーンを、陽の温かみやその場の空気感を意識して表現した作品です。それは私の身の回りだけではなく、各々にあるはずのものだと思うので、誰もが見たことがあるような、体感したことがあるような場面を切りとっています。

見た人が記憶を呼び起こして温かい時間を共有できるような作品群になり、またOLYMPUS PEN EE-2の素晴らしさも伝わったらいいなと思って作りました。

――OLYMPUS PEN EE-2とはどこで出会ったのですか。

名古屋で開かれていた骨董市です。「シャッターは切れて、露出も感知してくれるから、少し直せば撮れると思うよ」とお店の人に言われて、使えるかどうかもわからずに手に入れました。それまではデジタルカメラや携帯のカメラ、他のフィルムカメラを使用していたのですが、ハーフサイズカメラが気になっていて、欲しいと思っていたところだったんです。

――カメラはすぐに使えましたか?

はい。壊れてなくて普通に撮れました。「わーっ!」って嬉しかったですね。デジタルカメラももちろん便利でいいのですが、「絶対にピントが合ってないといけない」というようなルールに疲れてしまったというのもあって。このカメラはピントが固定で被写体から1.5mくらいの位置で合うのですが、距離が違うとピンボケしてしまうんです。でも、いつもと違う雰囲気がすごくいい。使っている過程で、カメラはいいぞ、という感じを思い出し、励まされました。

温かい気持ちになれる心地の良い作品

――山田さんが写真を始めたきっかけは何ですか?

2年前、仕事を辞めて時間ができたタイミングで撮り始めました。もともと携帯のカメラで撮っていて、写真をやりたいと思っていたからハードルが低かったのかもしれません。携帯では建物などの人工物を撮ることが多かったのですが、カメラを使うようになって、自然の中に人がいる状況を撮りたいと思い始めました。

――「Limelight」に応募した経緯を教えてもらえますか。

応募作品を撮ったカメラが OLYMPUS PEN EE-2だったということと、このカメラの良さを分かってくれる人がいたらいいなという気持ちで応募しました。受賞して、「PENありがとう」という気持ちです。写真展の開催は初めてだったので、何から始めたらいいかわかりませんでしたが、ギャラリーの方にいろいろと教えていただいて、貴重な経験をさせてもらいました。

――展示をしてみて気づいたこと、感じたことはありますか。

フィルムで撮影した写真も普段はデータで見ることが多いので、プリントしてきちんと額装した写真を見たとき、自分の作品ではないような気がして信じられなかったです。それと、縦写真が多いことに気づきました(笑)。お客さんともお話したのですが、あったかい気持ちになるとおっしゃっていただいた方が多かったですね。見ていると眠くなるという方も。

『 信頼 』
野良猫とどうにか仲良くなろうとしても逃げられる人間もまた、愛らしくも面白い生き物。
『 正月 』
お正月後半の公園で、寒いねと言いあう時間の輝き。

美しさだけではないもうひとつの意味

――「ここで 生きるひと、まとう空間と陽」という展示タイトルと、メインの作品について教えてください。

各々がまとう光の美しさを表現したくて、このタイトルを付けました。メインで使用した作品は、滋賀県に行ったときに出合った幻想的な夕陽を撮影した写真です。強い西日が本当にまぶしくてきれいだったのですが、ちょっと不安な気持ちにもなりました。

きれいだけど幸せを意味しているのとはちょっと違って、異質な感じがしたんです。1日の中でも夕陽は急に違う世界を作り出し、現実的ではないように感じることがあります。異世界にいるような気持ちになり、ここでしか撮れない写真だと思ってシャッターを切りました。

『 境 』
夕焼けは美しいこそ脳裏に焼き付き、落ち着かない。鮮烈な光の衝撃は、豊かで残忍。

――ほかにも、特にお気に入りの写真はありますか?

友人が車に赤ちゃんを乗せているところを写した写真でしょうか。私がいま住んでいる愛知県ではお母さんが子どもを車に乗せている様子をよく見かけるんです。子どもが車にちゃんと乗ってくれなかったり、ドアまでは来るけど、「まだ遊びたい」ってどこかに行ってしまったり。この写真は、チャイルドシートに座るのが嫌で起きているとすごく泣く子どもを、寝ているタイミングで「いまだ!」と乗せているところ。神聖なシーンにも見えますが、実はいろいろなドラマがある。こういう写真が撮りたかったんです。

『 守り 』
当たり前の動作は、陶酔するほどに美しく眩しい。

楽しい気持ちを絶やさずに探していく

――これからどんな作品を作っていきたいか教えていただけますか。

このまま同じように、同じテーマで撮影していくと思います。知らないことってたくさんあるなって気づいたんです。写真に撮って見返さないと気づかないことというか。それを探していくのが楽しいのかなと思いますね。私にとってその楽しい気持ちが作品を撮る上で一番大事なんです。撮るぞと意気込んで枚数をいっぱい撮っても、いい写真が全然ないことは普通にたくさんあります。楽しい気持ちを絶やさないためにも、フィルムカメラとデジタルカメラを行き来するやり方で、私にしか撮れない写真を探していきたいです。

会場で販売していた山田安海さんの写真集

文:安藤菜穂子
写真:竹中あゆみ

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