北上の絶景と美味、地元の温かい人々と最高のおもてなし - 第18回太平洋写真学校
昨年に引き続き開催となった「太平洋写真学校-北上教室」。第18回目を数える。今年は車の無い遠方からも参加頂けるようバスツアーも用意し宮城県外から参加者も交え39名が参加しました。
北上河川広がる絶景と郷土芸能をプロ写真家の写真指導による撮影、地元の方々のもてなしと交流。充実した2023年12月1日(金)~3日(日)3日間をレポートします。
太平洋写真学校-北上教室
「太平洋写真学校 北上教室」は、北上町時代(2005年宮城県石巻市に合併)から「写真の里」として町おこしの一環で、1997年12月に 第1回写真教室が開催されて以降、過去17回開講されています。
2011年3月。東日本大震災で甚大な被害を受け、6年間の休会ののち、2017年に再開。新型コロナによる再休会を経て昨年より再開。北上川のヨシ原が黄金に輝く12月に開催されています。
北上町には、写真愛好家を惹きつけてやまない、雄大な自然と歴史ある郷土芸能、そこで暮らす温かい人々の営みがあります。
1日早いスタート「写真家 清水哲朗 先生と巡るバスツアー」
太平洋写真学校に参加するには車での移動手段が不可欠で、これまで宮城県や隣県の方が参加の中心でした。遠方の方々にも北上町の絶景と郷土芸能、現地の人々との交流を楽しんでもらいたい想いから、今回は仙台駅発着のバスツアーが用意されました。しかも太平洋写真学校より1日早く集合し、伊豆沼で野鳥を撮影してから太平洋写真学校に参加するプログラム。しかも3日間、清水哲朗先生同行するプレミアムなツアーです。
ツアーには遠くは北海道や香川、東京から写真好き、旅好きな方々が集まりました。
3日間ご指導頂く写真家 清水哲朗先生と、ツアー申込でお世話になった、ノースジャパンツアーズ齋藤さんが参加者を迎えました。
「心配であれもこれも機材もってきたら荷物が多くなっちゃった!」「このカメラバックいいでしょ」「楽しみで前日から来ちゃった」などなど、バス乗車前から会話が弾みます。早速バスに乗車し野鳥撮影のため、伊豆沼・内沼に向かいましたが、みなさん興奮冷めやまずバスの車内は賑やかでした。清水先生からの挨拶と今日撮影するのに向いているレンズの説明があり、バス車内で機材の準備を行いました。
伊豆沼・内沼は宮城県北部の登米市と栗原市にまたがる面積387haの沼。渡り鳥の飛来地として知られ、特に冬季はハクチョウとガンが代表的で、マガンは日本に飛来する約8割が渡ってくると言われており、1985年に渡り鳥のための国際的に重要な湿地としてのラムサール条約に登録されています。
内沼に到着。ガンが足元まで寄ってくる距離で撮影。お尻をふりながら寄ってくるガンたちに癒されながら撮影しました。
内沼から伊豆沼・内沼サンクチュアリセンターへ移動し、夕刻にねぐら入りするガン、白鳥を撮影。16:00を過ぎた頃から次々にねぐらに戻ってくる鳥たち、大きな白鳥も頭上近くを飛んでいきます。「どこを撮ればいいの?」と鳥が多すぎて逆に狙いを定めきれない声も漏れました。
伊豆沼・内沼での撮影を終え、追分温泉にチェックイン
伊豆沼・内沼サンクチュアリセンターすぐ横には「伊豆沼農産」があり、地元産のお土産やお酒などが購入できます。早速お土産を購入し追分温泉へ。
山道を進みながら灯りが見えてきた峠の宿に「ここ清水先生のFacebookで見たことある!」との声もあがりました。
チェックインを済ませ、楽しみの夕食タイム。夕食を食べながら参加者同士自己紹介。全国から集まった写真好きな仲間とコミュニケーションが取れるのもツアーの魅力の一つです。追分温泉の豪華な料理に舌鼓を打ち、翌日からの太平洋写真学校に向け早めの床に就きました。
石巻市震災遺構門脇小学校
ツアー2日目。午後からの太平洋写真学校参加の前に、今回訪れている石巻市を知るのも撮影前の準備の一つ。
石巻市を知る上で避けて通れないのが2011年3月11日に発生した東日本大震災です。石巻市は東日本大震災最大の被災地。
午前中は「石巻市震災遺構門脇小学校」を訪れました。震災遺構門脇小学校が震災遺構としての保存が決まった時に、門脇小学校の記録写真を撮影されたのが清水哲朗先生。震災遺構門脇小学校内に写真が展示されています。
震災遺構門脇小学校に到着すると、サプライズで震災遺構門脇小学校の企画に携わり学芸員をされている高橋広子さんが迎えてくれました。施設内を高橋さんに紹介頂き、東日本大震災の被害の大きさと震災遺構が後世に伝える防災の大切さを学びました。
第18回太平洋写真学校-北上教室 開校式
12月1日(土)13:00。開会式会場の北上総合支所に、宮城県を中心に集まった写真愛好家、ツアー参加者、第18回太平洋写真学校の指導を頂く、竹内正 先生、井村淳 先生が合流。にっこり写真セミナー実行委員会長 横山 宗一さんの開会宣言で太平洋写真学校がスタートしました。今回、希望者に2日間貸し出すミラーレス一眼カメラ「OM SYSTEM OM-1」を紹介。レンタル希望者にOM-1を貸し出し。
北上川ヨシ原と法印神楽演舞 撮影
開会式を終え、撮影スタート。今回、北上川河川敷に特設されたステージで女川法印神楽の舞が演舞され、3名の写真家講師の指導のもと、陽が傾き黄金に輝くヨシ原を背景に神楽の舞を撮影しました。
北上川の河口に広がるヨシ原は日本有数のヨシ群生地。野鳥の声や風に揺れるヨシが奏でる音と風景は、残したい「日本の音風景100選」にも選ばれています。ヨシが夕陽に照らされ金色に染まる絶景を時間を忘れて撮影していました。
追分温泉のおもてなしと夕食会
太平洋写真学校は参加者全員宿泊が基本。参加者の皆さんが集まっての夕食会も楽しみの一つです。昨年は新型コロナ感染対策もあり黙食で静かな食事会でしたが今年は解禁!
豪華な料理に加え、歌あり、抽選会あり。写真が好きな仲間が集まっているので、講師の先生を中心にあちこちで写真談義に花が咲き、賑やかな夕食会となりました。
北上河口から昇る絶景朝日
前夜の夕食会の楽しい余韻のまま、有志参加による早朝撮影に出かけます。狙いは太平洋に昇る朝日と北上川の気嵐(けあらし)。この日は晴天に恵まれ、北上川河口に昇る雄大が朝日を見ることが出来ました。
太平洋と北上川の静けさの中から生まれる雄大な景色と海の幸。一方でひとたび地震が発生すれば牙となって襲い掛かります。さまざまな思いを胸に太陽に向けてシャッターを切っていたように思えます。
写真講評と写真家作品解説
早朝撮影を終えた後、宿に戻り朝食、チェックアウトを済ませた後は、北上総合支所に集合し、講師による写真講評会と作品解説です。
前日のうちに参加者が撮影した写真を3枚提出されているので、各担当講師より1点1点丁寧な講評がされました。同じ場所で同じ時間に撮っているに皆さん視点が異なり写真を見るのも勉強になります。講評会後は3名の講師による作品発表。撮影テーマや作品撮影に向けた視点などを学びました。
最後に横山宗一実行委員会長より、参加者の皆さんに写真教室の修了証が手渡され、太平洋写真学校を終了。
仙台駅までの帰路に就くバスツアーの皆さんに向け、実行委員の茂木一郎さんより、「次回は2025年春に実施します。また来たください。」とのサプライズ告知。北海道や香川から参加された方々も“また絶対に参加します!”と熱い声もあがりました。
仙台駅まで向かう途中、「道の駅 上品の郷」に立ち寄り、たっぷりとお土産購入し、帰りのバスの中では、3日間の思い出話や、それぞれの地元の撮影スポットなど写真談義で最後まで賑やかで充実した3日間となりました。
にっこり写真セミナー実行委員会より
「第18回太平洋写真学校-北上教室-」は清水先生のツアーも含め39人が参加、絶好の撮影日和となりました。いい写真が撮れたよ、次も参加するからね、など嬉しいお言葉を一杯いただきました。
思い起こせば1997年の第1回に始まり2011年の東日本大震災で6年間の休止、2017年に復活したものの3年後には、コロナの蔓延により2年間の休止、この間スタッフや事務局は打ち合わせを重ね2022年に再開することができました。私が本格的に関わったのが2005年、合併前に配置転換になってからのことで第8回の時だと思います。参加者が50人ぐらいで町内の3か所の旅館や民宿に分散して宿泊していました。当時は自然そのままで撮影場所にも本当に恵まれていました。
震災で休止を余儀なくされた2005年には講師の先生方のご協力でクラウドファンデングを行い、多くの賛同者から目標額を大幅に上回るご協力をいただき、震災前の豊かな自然、北上の暮らし等を収めた写真集を創ることができました。
昨年からは新たにOMデジタルソリューションズのご協力でカメラの貸し出しが好評です。
私は毎回、参加者の方々の顔を見るたびに懐かしさとまた会えた嬉しさで胸が一杯になります。これまで参加された方々には、かけがいのない北上の素晴らしい作品を残していただきました。
ご協力頂きました全ての皆様に心より感謝申し上げます。
にっこり写真セミナー実行委員会 副会長 今野政明
参加者の声
■原田美智子さん(香川県から参加)
スナップ写真しか撮ってこなかった私が、OM-1を手にしてから風景写真にも興味を持つようになりました。そんなところへツアー案内のメールが届いたのです。まだ行ったことのなかった東北地方、講師の清水哲朗先生のお名前とお顔はOM-1のカタログなどで知っておりました。私は早速昨年のレポートを一気に読み、「なんと楽しそうで充実したツアーなんだ、絶対に行きたい!」とすぐに申し込みをしました。
香川県から夜行列車に乗っての一人旅、ワクワクしながら仙台に到着した私の選択は間違ってませんでした。清水先生を始めとして、参加者は皆さん明るく写真好きの方ばかりで、緊張もあっという間に解けていきました。
1日目の伊豆沼では、初めて見た渡り鳥たちの荘厳な飛翔の姿に圧倒されました。
2日目、ヨシ原を背景に厳かに舞う女川法印神楽の撮影と北上川に沈む太陽に照らされて赤く染まったヨシ原の撮影
3日目、初めての経験で、どう撮れば良いのか試行錯誤した日の出撮影
どれも楽しい思い出となりました。
私にとって最大の思い出はなんといってもレトロ感満載の追分温泉です。次々と出てくる地産地消の美味しい料理は、ダイエット中ではありましたが、すべて平らげてしまいました。2日目の夜は太平洋写真学校の参加者の方々との楽しい夕食、夕食後のお楽しみくじ引きではなかなか名前が呼ばれず、気の毒がった前の席の方が遠い所から来られたのだからとお米を分けてくださるという人の優しさを味わうことができました。しかし、最後の最後に私の名前が呼ばれ、今までのすべての商品を差し上げますというサプライズ。その中には宮城米や海産物等の他になんと竹内先生の「旧車のある風景」という貴重な写真集が入っていたのです。ツアーに参加してなかったら絶対に手にすることがなかった写真集です。これには感激しました!
参加していなかったら出会うことがなかった野鳥の撮影に夢中の人たちとの交流。野鳥撮影の興味深い話をたくさん伺うことができました。
写真は人それぞれに色んな楽しみ方があり、人生を豊かにしてくれる手段であるということを教えていただきました。
本当に楽しく、これからの写真人生をさらに豊かにする3日間でした。
このツアーと太平洋写真学校がずっと開催され続けることを願うと共に、開催にご尽力してくださった方々に感謝いたします。
■藤田典子さん(北海道から参加)
ー 太古の昔を撮る ー
晩秋の陽に照らされて、河原のヨシが金色に揺れている。その前で神楽は始まった。体に響く太鼓の音、幽玄の世界に誘う笛。神々が勇壮に舞い、死力を尽くして戦う。ファインダーの向こうには、神代の時代の光景が広がっている。
コロナ禍以来初めての旅行で、当初いろいろな心配をしていましたが、旅が始まってからは新しい出会いと楽しいことの連続で、心配は杞憂に終わりました。2泊3日の旅の前半はツアー参加者と清水先生、OMデジタルソリューションズスタッフで、内沼・伊豆沼、震災遺構の門脇小学校を巡り、後半は太平洋写真学校に参加しました。
その中で特に印象に残ったのは、2日目午後の北上川河岸のヨシ原での神楽の撮影会です。太陽を受けて金色に輝くヨシ原を背に、太鼓と笛の音色に乗って、神楽の舞が演じられました。太古の昔にタイムスリップしたような幽玄の世界を撮る、そして講師の先生方からご指導頂けるという、なんとも贅沢な撮影会でした。なかなか思ったようには撮れませんでしたが、演じ手の気迫が伝わる一枚を撮りたいと思い、シャッターを切りました。
私にとって、北上の地は「金色」の印象です。北上川河岸に広がるヨシ原は圧倒的な金色。翌朝の海から昇ってきた太陽も、水面に映った日の光も、金色に眩しく輝いていました。また、まだ見たことのない野焼きの炎も、私の想像の中では金色の火の粉をあげています。ずっと変わらぬ大きな営みの中で流れている、雄大な北上川。太古の昔から、この豊かさで人々を魅了してきたに違いありません。
3日目の講評や講演会では、多くの視点から学ぶことの大切さを実感し、今後の写真撮影に活かしていきたいことをたくさん学ばせていただきました。
清水哲朗先生をはじめとする講師の先生方、OMデジタルソリューションズスタッフ、参加者の皆様、運営の地元の方々に感謝申し上げます。特に運営の地元の方々がどれほどこの太平洋写真学校のためにご尽力されたかは想像にかたくありません。ありがとうございました。
最後に心残りが一つあります。宿泊した追分温泉のお料理は、最高の海鮮料理でした!しかし、美味しすぎて写真に撮るのを忘れてしまいました。いつかまた足を運び、撮れなかったお料理の写真を撮って、SNSに挙げたいと思います。
出会った皆様方、本当にありがとうございました。皆様のおかげで久しぶりの旅は最高のものとなり、また旅を始める勇気が湧いてきました。
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今回訪れた場所
伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター
伊豆沼農産
峠の宿 追分温泉
石巻市震災遺構門脇小学校
北上川のヨシ原
道の駅 上品の郷
石巻市北上総合支所
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