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Limelight 2024 Under30部門 グランプリ作品 川島桃香 写真展 「花葬/人間に愛されなければ、今もまだ生きていただろうか」

本展に出展される全ての写真は、枯れてしまったユリの切り花を、様々な方法で葬る様子を記録した、ユリの花のための遺影写真である。

毅然と佇むユリの花が視界の端に映った時、その白が強烈に欲しくなった。チタニウムホワイトより強く、セラミックホワイトより青かった。恐々と花を手にして、支払いを済ませると、なんと容易く自分のものになった。
そうして入居したばかりのアトリエへ、耽美な白を迎え入れた。しかし次にその存在を濃く記憶せしめたのは、より強靭な白の台頭ではなく、死の気配を知らせる薄茶色であった。簡素な部屋に唯一差し込む麗らかさであった白は、日毎に腐朽の茶色に汚染されても、黙ってその身を委ねた。だから、毎日挨拶をするように水を取り替え続けた。白が完全に消え去っても、捨てることなどできず、その状態で一ヶ月近く過ごしたあたりで、自らの手で花を葬ることに決めた。

まずは土葬。アトリエの近くに穴を掘り、土の中に埋めた。次に火葬。マッチ棒を消費する毎に、鼻を掠める土のような匂いが濃くなり、人間に愛されなければ、こんな姿にならずに済んだのだろうか、と沈痛に燃え盛る炎を凝視した。最後に水葬。火葬したユリの亡骸を、アトリエの目の前の京橋川に葬った。すんなり川の流れの一部と化した時に初めて、もう二度と会えないのだとわかり、亡骸を包んでいたお粗末なティッシュと空虚感を、両手で握り締めるしかなかった。
その後季節が二度変わり、土葬したユリの上にはハルジオンが咲いた。そして白い絵の具を手にする度に、私はあのユリの花を何度も愛し直している。

・出展作品数
17点

写真展作品のアザーカットをクリエイティブビジョンにて、スライドショー展示いたします。


■期間

2025年3月20日(木)~ 3月31日 (月)10:00-18:00 ※最終日 15:00まで
 ※休館日3月25日(火)・26日(水)  入場無料

■作家プロフィール

川島 桃香(Kawashima Momoka)
2000 広島県生まれ

個展
2023 「じゃあ、いくか?ああ、行こう。ふたりは動かない。沈黙。」aL Base、東京
2022  「わたしは、海に、還った。」タメンタイギャラリー鶴見町ラボ、広島

グループ展
2024  「IAG AWARDA 2024」東京芸術劇場ギャラリー1&2、東京
2024  「SICF25」スパイラルホール、東京
2024  「空間彩添」aL Base、東京
2023  「A/B」廃墟ギャラリー、広島
2023  「TURNER AWARD 2022 作品展」TURNER GALLERY、東京/バックス画材ギャラリー、京都
2021  「広島国際映画祭」NTTクレドホール、広島

レジデンス
2024 紫尾アートプロジェクト2024 アーティスト・イン・レジデンス 招聘アーティスト

■会場

OM SYSTEM PLAZA Creative Wall(クリエイティブウォール)
OM SYSTEM PLAZA Creative Vision(クリエイティブビジョン)

●営業時間
10:00~18:00
火曜・水曜定休、GW・夏季・年末年始の長期休業

●所在地
〒160-0023
東京都新宿区西新宿 1-24-1 エステック情報ビル B1F
電話番号:03-5909-0190

●アクセス
新宿駅西口から徒歩5分
新宿西口地下ロータリー左側の地下道を都庁方面に進む。地下道上部に「エステック情報ビル」の表示あり。

都営地下鉄大江戸線都庁前駅から徒歩4分
B1出口から地下道を新宿駅方面に進む。地下道上部に「エステック情報ビル」の表示あり。

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