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「行ってみたい!」と思ってもらえる風景を写したい。藤原嘉騎さん写真展 「地球の色彩」インタビュー
元プロスノーボーダーという経歴を持ち、現在は写真家として国内外の風景を写し続けている藤原嘉騎(よしき)さん。地元の兵庫県や日本各地、またアイスランドやモンゴルなど世界を旅しながら写した写真展 「地球の色彩」が1月9日~ 1月20日まで開催されました。初個展となる本展の作品について、旅の様子についてなどお話を伺いました。
展示して再発見した自分の写真
――今回が初個展とのことですが、どのような作品を展示しようと思いましたか?
これまでに訪れた25~26か国の中から、日本を含めて9か国ほど、自分が見てきたいろんな風景の写真を展示しました。日本には四季がありますが、他の国でも時期によって見られる風景や色は変わります。たとえば、アイスランドでも1月と9月では違う。自分が見たその色をお客さんに見てもらって、「ここに行ってみたい!」と思ってもらえたらいいなと思って作品を選びました。
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――1枚目に展示した作品はどこで撮影したものでしょうか。
ミャンマーにある小さな寺院(パゴダ)で撮ったものです。バガン遺跡にはこういった小さな寺院が数千もあって。もともと朝靄の中にバルーンが飛ぶ風景を撮ることが目的でミャンマーへ出かけたので全然興味なかったのですが、現地の写真家が案内してくれて訪れてみると、バルーンより感動してしまいました(笑)。旅は新しい発見や出会いがあるから楽しいですね。
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――初めて個展をしてみていかがですか?
いろんな知識を持った人が来られるので、自分とは全然違うところを見るんだなと発見があり面白いですね。たとえば先ほどの寺院の写真を見たお客さんに、「仏像はきれいに塗装されているのに、壁面はボロボロで歴史を感じますね」と言われたんです。自分では全然気づかなかったことを、人から教えてもらえることに驚きましたね。
たくさんの方が自分の写真をちゃんと見て、関心を持ってくれたことがめちゃくちゃ嬉しかったです。誰も来ないのではと思っていたので(笑)、まさかこんなに反応があるとは思いませんでした。
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旅の過程も伝わる展示に
――大きなモニターでは旅の過程を写した映像が流れていましたね。
写真だけ見ても、実際に行く旅の道のりは分からないじゃないですか。例えばボリビアのウユニ塩湖へ行きたいという方は多いですが、行くまでにどれぐらい時間がかかるのか、入口ってどんなところなんだろうとか、分からないですよね。
カメラの設定などを知りたい方も多いと思いますが、それは行ったときの天候や状況で変わってしまうので、それより少しでも旅の参考になればと思って。行き方だけでなく、雪の中で落とし物のスマホを見つけて届けたり…、旅の過程にもエピソードはたくさんあるので、少しでも伝わったらいいなと思って映像も展示することにしました。
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海外で写したダイナミックな自然風景
――大きなサイズの星景写真は迫力ありますね。
OM SYSTEMのライブコンポジットで撮影した写真です。現場でシャッターボタン2回押すだけで撮れるのが便利ですよね。ニュージーランドは星がきれいなんです。ブルーアワーの時間から撮りはじめてだんだん太陽が沈み、このようなグラデーションの色が写りました。
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――撮影に苦労した1枚はありますか?
このモンゴルの写真ですね。ふだん風景の写真を撮ることが多いのですが、National Geographic Travel Photo Contest のPeople部門で世界2位を獲ったことがあり、「イーグルハンターを撮りに行く」という人物撮影の仕事で訪れたときの写真です。ウランバートルからすぐの草原には観光客向けのイーグルハンターがたくさんいるのですが、そうではなく「本物」を撮ってきてほしいという依頼でした。
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イーグルハンターは遊牧民で移動するため、場所も不確定で撮れるかすごく不安でしたが、モンゴルの1番西にあるウラーンゴム空港から丸一日かかる国境付近の場所、アルタイタバンボグド国立公園でやっと会えました。行くまでに車がパンクして修理に何時間もかかったり、携帯電話が繋がらなくて連絡できなかったり、撮影期間が2日しかなかったりと大変でしたが、がんばって撮った写真です。
現地では、貴重なヤクを目の前でさばいて大きな鍋に頭ごと煮込み、ナイフで肉を削いで食べるおもてなしを受けるなど、あまりない経験をさせてもらい、印象深い旅でしたね。
目に浮かぶその1枚を撮るために
――旅に出て写真を撮りはじめたきっかけは?
スノーボードをしていたとき、英語が話せなくて海外へ行くのに抵抗があったのですが、アメリカやカナダの山に滑りに行ってみると、気持ちよすぎて、面白すぎたんです。それから忙しくなりしばらく行けなかったのですが、スノーボードをやめてから2年くらい、いろんな国に行きました。最後に屋久島へ行く際に、せっかく大好きな自然のある場所に行くから、写真を撮りたいなと思って、カメラを買ってハマったのがきっかけです。
最初に買ったカメラはすごく大きく感じてしまい、3か月後くらいにオリンパスのPEN Lite E-PL3を買いました。それからOM SYSTEMのカメラはずっと使っていますね。
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――日本の写真もありますが、蛍の写真はどちらで撮影したものですか?
大阪の住宅街の一角にある公園です。都会の中にあんなに蛍がたくさん飛ぶ場所があると知ると、大体みんな驚きますね。家の近所なのですが、子供やおじいちゃん、おばあちゃんもみんな夜になると見に来る場所なんです。
蛍は平地から山の方へ飛ぶところがどんどん変わっていくので、5月20日頃を皮切りに、7月中頃まで移動して撮り続けます。場所によっては夜遅くまで飛ぶので、蛍の時期は寝不足になります。
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地元の兵庫県で写した紅葉や雪山の写真も展示しましたが、兵庫は神戸の印象もあり都会的なイメージを持たれる方が多く、「こんな場所があるんですね」と皆さん驚いてくれて。自分の地元が褒められたみたいで、すごく嬉しかったです。
――風景の中に人物が入っている写真も多いですね。
そうですね。スケール感を伝えたいときには人を入れて写すようにしています。この写真は、香港の夜景で有名なビクトリアピークの、反対側にある山に登って撮りました。左上に見えるのがビクトリアピークでそこにも撮りに行きましたが、よく見る場所なので、他に面白い場所はないかなと考えて撮りに行ったんです。
この写真の崖の上にいる人は、たまたまいた現地の人。中国語はわかりませんが、「日本人がよくこんなところを知っているね」みたいなことを言われました。お願いして立ってもらって撮影したんです。
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――次に行ってみたい国はどこですか?
グリーンランドに行きたいです。雪深いところに生まれたので、雪景色に憧れているのかもしれません。「この1枚を撮りたい」と思って旅に出ることが多いのですが、いま思い浮かぶのは、グリーンランドの海面に浮かぶ氷山。青い海に白い氷山、その1枚を撮りに行きたいですね。
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文・安藤菜穂子
写真・竹中あゆみ
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