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なによりも、自分自身のためなのかもしれない - 川瀬智久

【わたしのまちとカメラ Vol.039 長浜ローカルフォト#013 】

長浜ローカルフォトメンバーの紹介シリーズで、今回登場するのは、川瀬智久さん。長浜ローカルフォトの立ち上げ人としてメンバーを鼓舞、活動すべての調整役としても立ち回ってきた存在です。
長浜の暮らしをともに追いかけるなかで大切にしてきたことを、改めて振り返ってみました。

【プロフィール】
川瀬 智久 Tomohisa Kawase
1971年長浜市生まれ。長浜市勤務。長浜ローカルフォトの前身となる同アカデミープロジェクトの立ち上げから携わる。その他長浜のローカルメディア「長浜くらしノート」を運営。



10年のあいだ、一緒に暮らしを追いかけてきた

 「長浜の、そのまんまの暮らしを発信していきたいんですよねえ」
川瀬さんと知り合ってかれこれ10年以上が経ちました。出会った頃にこんな思いを聞かせてくれたことを覚えています。それは現在、市内での2つの活動として結実しています。
一つはもちろんこの長浜ローカルフォト、そしてもう一つは市民団体「長浜生活文化研究所」です。今この文章を綴っている私もひょんなご縁でこの二つの取り組みに関わることになり、結果、川瀬さんとは両活動を通じてなかなか濃密なやりとりをしてきたことになります。
長浜ローカルフォトの発足やその経緯については、「OM noteはじめまして、長浜ローカルフォトです。」で川瀬さんが自身の言葉で綴っているので、こちらでは長浜生活文化研究所について少し紹介しましょう。
長浜生活文化研究所では2014年に「長浜くらしノート」というウェブメディアを立ち上げ、記事を発信しています。
テーマは「普段着の長浜」。川瀬さんはじめデザイナーなど市民有志が運営し、運営者自身が実際に送っている普段の暮らし、遊び、さらには先達から教わる暮らしの知恵など、これまでの「観光」目線でない長浜を紹介してきました。
現在は4人での運営ですが、記事の書き手として関わってくれた市民は20人近くになるのではないでしょうか。

WEBページ「長浜くらしノート」
長浜生活文化研究所が店舗デザインや商品販売コンセプトに携わった
「長浜くらしノートストア」


発信の前にすることがある

私の役割でいうと、ローカルフォトの活動では川瀬さんと事務局を担当(現在は退いています)、また研究所ではメンバー全員が企画運営を担っています。
そのため、そもそも暮らしを題材にすることってなんなのか、なんのためにやっているのかといった目的や意義を常々明らかにし、共有しあってきたように思います。

そのなかで川瀬さんと大切にしてきたことは、被写体となってもらう(記事に取り上げさせてもらう)人との「関係を築く」でした。
そこにあるありのままの暮らしをファインダーで切り取るには、ありのままの姿でいてもらう必要があります。
いきなり集落にやってきた見ず知らずの人間に、ありのままの姿をさらけ出すことできるでしょうか。強引に撮影できることもあるでしょう、ただ、2度目はありません。

「ああ〜、ようきたな〜、今日はなんや〜?」。先々でそう言ってもらえるような、関わりづくりをしようと務めてきました。そのためにはまずは顔を覚えてもらう、取材や撮影に至るまでにしなくちゃならない信頼関係の構築があります。

撮影前のコミュニケーション
撮影後「せっかくやで食べてきや」とお誘いを受けたときのひととき

こういうお付き合いをさせてもらうことで、何が起きるかというと、長浜中に親戚がいっぱいいるみたいになるのです。

「最近どうしてるんや、野菜がたくさん採れたしもらいにおいで」「山菜とりに一緒に行くか?」「今度こういう法要をするけど見に来るか」

そんな連絡をもらい、また喜んで出かけ、またその様子を写真に撮らせてもらう。逆に、きちんと事前の説明ができてなくって怒られることだってありました。
反省や学習もありつつ、この繰り返しを一緒にしてきたように思います。

集落の人全員寄ってもらっての集合写真撮影


頼まれごとは試されごとなのか

ローカルフォトの活動が認知されてくると、ありがたいことに、集落や団体さんなどから「撮影してほしい」というようなお声がけをいただく機会も徐々に増えてきました。ただ、市民活動という側面、スケジュールやボリューム的にお応えするのが厳しいときだってあります。

川瀬さんはそんなとき「頼まれごとは試されごとなんですよ!」と、なんとかして引き受けてしまうのです。
相手の期待に応え喜んでもらうことももちろんですが、応えようと努めることで、相手からの評価につながり、また自分たちも成長できるとの思いからでしょう。
できない理由を挙げるのではなく、どうしたらできるのかを考え、かつ、メンバーのプライベートに負担がかからないように役割を調整するのは川瀬さんの役割であり、川瀬さんにしかできないことだと断言できます。

ローカルフォトでは、カメラ講座の講師も請負います

そういえばコロナ禍に差し掛かる前に「今度は伊豆神社の大祭を1年を通じて追いかけてみたいんですよね」と川瀬さんは熱く取材願望を語っていました。
祭礼がハレの行事とすると日常の暮らしはケになります。ケのなかでの人々の結束のかたちが祭礼へつながっていきます。きっとそういう部分に魅せられてのことだと思います。

このようにして長浜という一地方の暮らしぶりを発信することによって、多くの人に長浜に関心をもってもらったり、好きになってもらったりすることは、目的の一つです。ただ、それ以上に、発信する側が長浜への解像度を高め、より愛着を深めていくことにほかなりません。
川瀬さんはそれを10年にわたって率先して体現している人、なのです。

写真:田中香織、辻昌代、山内美和子
文:矢島絢子

矢島絢子
ライター。滋賀に特化したローカルでの取材・執筆を担う。
長浜ローカルフォトではその前身のアカデミーから数え4年間事務局としてサポート。現在長浜への移住希望者を支援する市の移住コンシェルジュとしても活動。

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