フォトグラファーがコーヒーバイヤーになる話。#02 ~コロンビアはコーヒーの国立公園もあるツアー充実の国だった。~
「フォトグラファーがコーヒーバイヤーになる話。」と題して、日本のコーヒー屋さんの向こうにある「コーヒーを作っている人たち」に出会い、いつしかコーヒーを買い付けるコーヒーバイヤーとなっていくお話です。
主にコーヒー生産国で撮った写真とそれにまつわるお話を綴っています。
今回は、南米コロンビア編です。
前回のnoteでお伝えしたグアテマラ訪問で、農園の空気感や様子を見てきましたが、昔は今ほどコーヒーについて情報発信するコーヒー屋さんはまだまだおらず、私もこの頃はコーヒーについて初心者で、徐々に勉強していきました。最近はコーヒーに詳しい方も多いかと思いますが、是非お付き合いください。
南米コロンビアに行くぞ。
Hola!(オラ!)
ご覧いただきありがとうございます。中島慶太です。
カメラメーカーで営業として働いていて、グアテマラに訪問をしてすっかり雰囲気が気に入ってしまった私ですが、ついに一念発起して仕事を辞め、半年間の撮影旅行を決意します。そのスタート地点がコロンビアでした。コロンビアでは、コーヒー生産が当時世界3位の量を誇っていて、日本の3.4倍の広さがあって移動はバスがメインです。コロンビアでは、首都ボゴタを起点に農園やカリブ海の港がある街を見て回りました。
旅の行動を共にしたのは高校からの付き合いで、当時コーヒー屋を開業準備中だった通称「ヨシ」です。彼は先にスペイン語を習っていて、とても頼りになった存在。後に自分もスペイン語学校に通いますが、南米ではヨシにとても助けて貰いました。私はこのために買ったスペイン語電子辞書、会話帳を読んで必死に語彙を覚えている段階でした。私は南米を旅した後にヨシと別れ、グアテマラのアンティグアでホームステイをしながら語学学校でスペイン語を習いました。
持っていくカメラ機材や防犯対策
中南米に半年間滞在する、この旅行を決めた時に一番考えたのは、やっぱり強盗に遭う危険性について。旅行中に強盗に遭うか、スリに遭うか、カメラが万一故障する可能性も考えて機材を用意しました。
■当時持っていったカメラ。
カメラ:デジタル一眼レフ2台
レンズ:標準ズームレンズ、広角ズームレンズ、望遠ズームレンズ、単焦点マクロレンズの計4本
コンパクトデジタルカメラ:2台
2セット持って行って、片方にトラブルがあっても対応出来るようにしています。あと、高いものが入っていそうには見えない、使い込まれていい感じになったカメラバッグに入れて持ち歩きました。
三脚は、三脚バッグに武器(銃)が入っている様に見えるので、カメラの手ぶれ補正の優秀になっていたこともあり、小型の三脚だけを持参しています。旅は本当に身軽さが大事です。今のミラーレスカメラは、より小型軽量で機材の選択肢が増えました。
そういえば、グアテマラでは、緑のミリタリー生地の小さいバッグを持っていたのですが「それ銃入ってる?ハハハ笑」と言われた事もありました。
スーツケースには、2セットの機材のうち1つを保管してリスクを分散させています。バックパッカーといえば、リュックを背負って行くイメージですし、最初のグアテマラはリュックを使いましたが、リュックに入れた機材へのダメージやホテル内に荷物を置いて外出した際に、中身を破かれて盗られる可能性もあるので移動は面倒でも鍵のかかるスーツケースがより安全です。スーツケースで開閉がチャックのものは、鍵とか関係なく簡単にカッターで切られてしまうので、ご注意を。シャトルバス等に荷物を預けた時や、部屋にスーツケースを置きっぱなしにして外出した時にホテル従業員が盗む事もあります。日帰りツアーなどで外出時も貴重品の出しっぱなしには注意です。
写真データについても、半年間では管理が大変でした。メモリーカードも今より容量が遥かに小さいせいもあったと思います。
バックアップをフォトストレージと言う専用のバックアップ機器に毎日コピーしていた他、そこから更にポータブルHDDにコピーをして写真データは二重になるようにしました。移動中は強盗対策で、フォトストレージをカメラバッグ、HDDをスーツケースに入れていました。カメラバッグとスーツケースを一度に全部強盗に合わなければ、それまでのデータが残ります。
(旅行当時はWiFiがなかったのですが、今なら小型ノートPC+小型SSDに加えて、クラウドへのデータコピーが良いかと思います)
長距離バスでの移動が多い中南米旅行では、すべての荷物を持っている状態のバスターミナル付近は危険度が高まります。
南米コロンビアに到着
南米コロンビアへはアメリカを経由して、首都ボゴタに夜に到着しました。現金が無いと困るので、米ドルをコロンビアのペソに両替しますが、このレートが結構悪かった。空港で両替はこれ以降最低限の金額か、街に着いてから両替した方が良いと学習しました。街にはカンビオ(CAMBIO)という看板の両替屋が当時沢山ありました。店によっても多少レートが違います。
初めて来たコロンビアの空港に夜に到着するというのは結構不安な話ですが、ヨシのスペイン語のマウリシオ先生の実家に泊めていただく事になっていて、マウリシオさんの弟であるマリオさんと妹のマウレーンさんが迎えに来てくれました。(彼は弟だけどマリオ。マウリシオ、マリオ、マウレーンの3兄妹)
マリオ宅は首都ボゴタにありますが、入り口の鉄の扉に鍵が多くて面倒。日本でも良くあるダブルロックの他に、扉に小さい扉がもう一個付いていて、マリオはそこも開けると、そこの小さく開いた扉から手を突っ込んで、内部に隠れた鍵をガチャンガチャンと開けていく。一見トリプルロックの扉ですが、扉の裏側に更に鍵がある。全部で5ロックくらいありました。
ちょっと意味が分からなかったと思いますが、彼はビルの警備員が持っていそうな鍵束をジャラジャラさせながら、鍵を順番に開けていきます。それを見て、自分としては想像以上に危険な国なのかな?と不安を覚えました。
マリオ宅に着いてすぐ、マリオさんのお母さんにアロスコンレチェと言う料理を振舞って貰いましたが、この料理はお米に砂糖を入れて牛乳で煮て、シナモンや干し葡萄を風味付けに入れたスイーツ。見た目はお粥です。
シナモンも干し葡萄も苦手な私は困惑しながらも失礼の無い様に頑張って食べました。ちなみにヨシはお腹いっぱいだと言って、食べかけをわたしに寄越して来たのを覚えています。
後で分かってきましたが、コロンビアは全体的に食事の量が多いです。
コロンビアでのコーヒー農園訪問
2日間マリオの案内で観光をしたのち、早朝マリオとお別れしコロンビアのコーヒー生産地を見に行くために移動します。出発時、マリオが例の複雑な鍵の一つを開けていると、鍵の一つが鍵穴でねじ切れてしまい、開かなくなってしまいました。あの扉には驚かされましたが、色々と案内してくれたマリオには感謝しています。 首都ボゴタを離れ、コロンビア中部のキンディオ(Quindío)という生産地へ行ってコロンビアコーヒーの生産を見に行きました。
コロンビアには、コーヒー農園付きのホテルというコーヒー好きには実にたまらないホテルがあります。その時泊まったホテルでは、コテージの様な建物で外にプールまでついています。中南米では、プール付きのホテルが多いのですが、シャワーの水の出は悪いのに、プールに入れる水はたっぷりある(苦笑)のが面白い。水着ももっていましたので、プールも楽しみました。
ホテルではコーヒーについて農園主がアテンドしてくれましたが、最後に彼の焙煎したコーヒーは話に夢中になったせいで、かなりコゲコゲの焙煎で、私の口には会いませんでしたが、さらにその後、何故かカルーアミルクが出てきで、超深煎りコーヒーのチェイサーがカルーアミルクという面白い体験をしました。
コロンビアコーヒー国立公園へ
このキンディオには、コロンビアコーヒー国立公園(Parque del Café)という場所があります。観光ツアーとして見れるコーヒー農園はありますが、コーヒーをテーマにした国立公園というのが凄いですよね。自分の知る限り、中米にはありません。 公園は広いので、レストランや博物館もあって一日中居られそうです。コーヒーについては、苗の状態からコーヒーチェリーという実のなっている状態、その後の精製工程まで見ることが出来、まさにFrom seed to cupを見ることが出来ます。色々見ていましたが、施設内にある博物館で面白かったのは、日本のコーヒー自販機が展示されていたことでしょうか。残念ですが電源は入っていませんでした。(日本のお金が無いと動かないので)これを日本から持って来たって凄いですね。
この写真は、リフトに乗って上から撮った状態ですが、左下の木はコーヒーの木です。そして、右の赤い屋根の下に摘んだコーヒーの精製する機械が展示されて、コーヒーの木は苗から育てているところから、摘み取った後の工程まで見られるようになっています。
収穫の重要性
コーヒーの実って、一斉に熟すと思っていませんか?
同じ木になったコーヒーの実でも、熟すタイミングはズレがあります。雑にやるなら、枝についた実をいっぺんに引っ張ってしごき取れますが、緑の未熟も沢山取れてしまう。(フルーツは追熟するのもありますが、コーヒーの実は追熟しないため、緑の状態で摘み取って保管しても赤くなりません。)
彼らは取った量で給料が出ますので、丁寧な手摘みでも勢いで緑の実も取っちゃう事が全く無いわけではないですが、良い農園はまず優秀な摘み取り手(ピッカーとか言ったりします)がいることになります。
熟したタイミングを見計らって摘み取り作業は数回行いますが、最後の作業時は、熟していない緑のものも取ってしまいます。残ったコーヒーチェリーが木から栄養を取ってしまうので木の保護、コーヒーチェリーに害虫が付くのを避ける(落ちてしまったのも拾った方がいい)という理由だそうです。農園が斜面のときは、数百メートルの標高差があったりしますが(1400~1600mなど)標高が低い場所から熟すのが早いです。コロンビアは、アンデス山脈の影響か農園に斜面が多いと言われています。エルサルバドルでも斜面の多い農園に行ったことがありますが、斜面での摘み取り作業は非常に大変です。歩いているだけで、下りで葉っぱに滑って重いカメラバッグに振り回されて、転んだりするくらいの斜面です。美味しくて高価なコーヒーはスペシャルティコーヒーと呼ばれたりしますが、コーヒーの生産者、輸出、輸入の業者やコーヒー屋の沢山の苦労や手間が詰まっています。
カリブ海に面した港町へ
キンディオでコーヒーを沢山見たあと、長距離バスに乗って、カルタヘナという古い港町へ向かっています。中南米旅行は、基本電車は地方にないのでバスの旅となります。ここでは丸一日の長距離を経験。長距離バスは、異常にエアコンが効いていて、とんでもなく寒いのでご注意ください。途中運転手に文句を言っても改善されません。自分は風邪を引きました。(現地の人は毛布持参でバスに乗って来ていました)
カルタヘナは、スペインが中南米を征服した頃、ペルーなどから強奪した金銀をスペイン本国に運び出し、アフリカからの奴隷貿易の拠点となり、その船をフランス、イギリスの海賊が襲うということで、町には要塞が築かれた歴史のある場所。
カルタヘナを見た後に、更にもっとゆったり出来る場所を求め、更にカリブ海沿岸を移動し、サンタマルタという別の港町へ。昔缶コーヒーでサンタマルタという名前の商品があったのを覚えていますか?コロンビアのコーヒーを使った商品で、名前はここの港町から取ったようです。
コロンビアはティント(Tinto)という名前で、小さめなサイズながらよくコーヒーを売っています。もう少し都会だと、コーヒーの入った魔法瓶を何本も背負って売っているおじさんもいます。コーヒーを飲むことが生活に根付いていて、一杯50円位です。このとき泊まった宿、カサデフェリペ(La Casa de Felipe Hostel)は調べたらまだ営業していました。窓が開放されていて、たくさん蚊にさされた記憶があります。コロンビアはスープ系料理が充実していますが、タガンガで自宅を開放して食事を出していたおばさんのモツが入ったスープがコロンビアで一番美味しい食事でした。
首都に戻りコロンビア出国
コロンビアはコーヒーの生産地からカリブ海まで見て回り、また冷蔵庫のようなバスで首都ボゴタに戻って、マリオに挨拶をして最後に首都でカフェめぐりをしてから、コロンビアを出国しました。
道端の屋台で、危ない薬をふかすためのパイプなどを売っていましたが、「使ったら国を出れないよ」とマリオから当たり前なアドバイスを貰いました。特に怪しい人相では自分ではないと思っていますが、コロンビアの出国時カメラバッグをめちゃくちゃに調べられました。
空港係員は、カメラバッグの底に入っているクッションを取り出して、ドライバーでオラオラ!!となんの断りもなく何箇所か穴を開けて、クンクン匂いを嗅いでいます。「良し!行っていいぞ!」ってこっちは、何も良くないのですが、抗議する語学力がなく諦めました。
次回予告、グアテマラでスペイン語を習って、少しマイナーなコーヒー生産地へ
コロンビアのコーヒー農園いかがでしたでしょうか。私はグアテマラとコロンビアを見た事で、ほんの少しずつですが、国や地域が違えば農園の様子が違うのが分かってきました。
あと、最近コーヒー屋さんで、産地の情報が良く書かれているのを見かけた事があると思います。
産地情報として農園名、品種や精製に注目が行きがちですが、摘み取ってくれる人も大事だと思い今回のnoteを書きました。
今後のnoteでは、ピッカーさんの写真もお見せしていきたいと思います。
次回は、ホームステイでスペイン語に習いに再びグアテマラに行った話や、あまり日本に入ってこないグアテマラのレアなコーヒー産地の写真をご紹介します。
文・写真:中島 慶太
写真の無断転載は固くお断り致します。
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お問い合わせ先 cafedearabica1974@gmail.com
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