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海野和男写真展「マクロレンズで撮る昆虫世界」インタビュー

世界中を飛びまわり、その土地に生息する昆虫を長年撮り続けてきた海野和男さん。今回は60㎜と90㎜のマクロレンズを使って2022年に撮影した作品で展覧会を開催。展示作品やOM SYSTEMのカメラの魅力、今後の活動について伺いました。

海野和男 Kazuo Unno
1947年東京生まれ、小学生時代より昆虫と写真に興味を持ち東京農工大学で昆虫行動学を学んだあと、フリーの昆虫写真家として活躍。 1999 年よりデジタルカメラで撮影し、コメントを付け発表する「小諸日記」をはじめ、現在まで毎日更新を続けている。熱帯で擬態、世界のチョウの撮影をメインとしていたが、昨年からは小諸のバタフライガーデンに籠もり、庭の自然を撮影している。
写真集「昆虫の擬態」で 1994 年日本写真協会賞を受賞。子ども向けの書籍を中心に 150 冊以上の著作がある。 2021 年日本動物行動学会日高賞を受賞。現在、日本自然科学写真協会( SSP )会長。


長野県小諸市のアトリエで撮影した蝶やハチの写真

――今回の展示「マクロレンズで撮る昆虫世界」は60㎜と90㎜マクロを使った作品50点で構成されていますが、展示してみていかがですか?

僕は広角レンズが好きで、いつもは広角で撮影した作品とマクロの作品を組み合わせて展覧会をすることが多いんです。でも今回はマクロだけでやろうと自分で決めたので、広角がないわけですよ。同じような写真ばかりにならないように、セレクトが大変でしたね(笑)。

――アトリエがある長野県小諸市のお庭で撮影した作品も多数ありますが、どのようなお庭なのでしょうか。

お花は100種類以上あると思います。表庭と裏庭があり、裏庭には日本の在来種の植物が咲いています。たとえばついこの間はカタクリが咲いていました。元ある植物が咲くように周りを手入れしているんです。

表庭の花壇には蝶が好きな宿根草(一度植えると毎年花を咲かせてくれる草花)を植えています。たとえばバーベナ・ハスタータやポリジ、ハタザオキキョウ、クラウティアなど。クラウティアは昔、薄紫色の花に蝶々がたくさん来ているところをフランスで見たことがあったので、探してきて植えました。お手頃な花を植えてみて蝶が来るか試すんです。庭には90種類くらいの蝶が来ます。

展示会場には絶え間なくお客さんが訪れ、一人一人に丁寧に解説していた海野さん。

――珍しい蝶などもいるんですか?

たとえばこの青い蝶々はシジミチョウといって、準絶滅危惧種の蝶です。うちの庭で発生しているんですよ。他にも3種類ほど絶滅危惧種がいて、それらの蝶が毎年ちゃんとやってくるように自分で草刈り方法を考えているんです。毎年6月上旬に結果が分かるんですが、いつも心配でしょうがないですね。

去年の草地の手入れはうまくいったのだろうか。
6月に入り、毎日準絶滅危惧種のヒメシジミの発生を心配しながら待っていた。
2022年は6月8日に出会うことができ、一安心。
翅を開いたところを深度合成で撮影。
OM-1 / OM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro

――昆虫の中でも蝶の作品が多いですが、蝶の魅力は何でしょうか?

やっぱり自由に飛び回るところですね。でも本当は全然自由ではなくて、蝶も生きていくのは大変なんですよ。でもそういう風に見えて憧れたんです、子供のころ。それで蝶々が好きになりました。

――ハチの写真も表情までしっかり分かりますね。

これはマルハバチですね。OM-1が出てからハチが撮りやすくなりました。以前はローリングシャッター現象で羽が歪んでしまうことも多かったんですが、最近はプロキャプチャーモードが進化して、かなり軽減されました。ありがたいですね。

先日カナダの方が来ておっしゃっていたのですが、カナダだとハチは蝶々以上にフレンドリーな昆虫らしいんです。日本人はスズメバチがいるからみんなハチを怖がるけど、カナダでは庭に花を植えてああやってハチが来るとみんな喜ぶそうです。

かつてなかった90㎜マクロレンズ

――今回、使用された90㎜マクロレンズの一番の魅力を教えてください。

テレコンバーターがあれば、最大倍率が8倍で、蝶々の鱗粉まで撮れるところでしょうか。1㎜~1.5㎜しかない蝶の卵もこんなに大きく撮れるのがこのレンズの特徴です。テレコンバーターがなくても4倍まで行くわけですから、普段はそれで十分。でも、もっと拡大して撮りたいなと思ったときに、画面いっぱいに写るというのは凄いです。そういうレンズはかつてなく、いままでは特殊な方法でしか撮れませんでした。

今度の90mmマクロはMC20を装着すれば、何と換算8倍の写真が撮れる。
左は高さ1.5mm程度のスジグロシロチョウの卵をカメラ内深度合成で撮影した。
右は庭のユキヤナギに産み付けられたホシミスジの卵をフォーカスプラケットで撮影したものだ。
OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO+MC-20

世界一大きい蝶をニューギニアで撮影

――2022年9月~10月に訪れたニューギニア島のジャングルで撮影した作品について教えてください。

ニューギニア島へは「ダーウィンが来た!」というNHKのテレビ番組の取材で行きました。ものすごく珍しい、世界一大きな蝶を撮りに行ったんです。同じ場所に20日間以上通い、朝4時に宿を出て、6時半~7時に着いて撮影、という生活をしていました。

蝶のオスは体長22㎝、メスは30㎝あります。数がものすごく少なくて、オスは1回しか見られませんでしたが、蛹から羽化しているところが撮れました。他にも、ニューギニアを中心に生息している昆虫を撮影してきました。

(左)世界最大の蝶、アレキサンドラトリバネアゲハのオスの羽化の様子。
(中)ホウセキゾウムシ。
(右)オオルリアゲハの飛翔の様子。

――特に気に入っている写真を教えてください。

このオオルリアゲハの写真ですね。ISO16000で撮影しました。いつもはISO3200以上にはしないのですが、今回はテレビの仕事ということもあり、暗くてもある程度撮れるようにISO感度をオートに設定していたら、たまたまISO16000になったんです。ノイズリダクションがものすごく効いていますよね。ISO8000よりノイズが少ない。すごく気にいっています。

オオルリアゲハの飛翔を撮影したが、暗くてISO感度が16000まで上がってしまった。
OM-1はISO12000を越えると、ノイズリダクションが強めに効くので、
ISO8000よりも綺麗に感じた。
OM-1 / OM.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO+MC-14

――海野さんはずっとオリンパス、OM SYSTEMのカメラを使い続けていらっしゃいますが、その魅力はどこにありますか?

僕はあまのじゃくで、一番人気のカメラは好きじゃない。特徴のあるカメラが好きなんですよ。中学の時、36枚フィルムで72枚撮れるのが魅力でオリンパスペンを使い始めたのですが、それからオリンパス(OM SYSTEM)のカメラが僕の手元になかったことはないですね。

虫は小さいので、カメラも小型のほうがいい。昆虫を撮る人にはぴったりのカメラです。それに防塵防滴なのでアウトドアで安心して使えますね。ニューギニア島もしょっちゅう雨でした。カメラを三脚に据えておいて、濡れたらそのままにしていましたね。

日本でも庭仕事をしているとき、大雨の時は避難するけれど、小雨ならカメラは濡れっぱなしです。すぐに撮れるように、庭に転がしてあるんですよ。それで安心安全だから、助かりますよね。カメラを大切にしないとみんなに怒られますけど(笑)。

3500キロを走る中国・東チベットへの旅

――今後の活動について教えていただけますか。

僕は子どもの頃、図鑑に載っていた観たい蝶々を、全部撮りに行きたいと思っていました。世界中にね。それでかなり撮りに行きました。南の方はほとんど全部と言っていいくらい。50か国以上はもちろん行っています。その土地土地にいる昆虫はそれぞれ違うので、行かなくちゃしょうがないでしょう(笑)。

特に2019~2020年は1年間で10回ほど海外に行っていました。昔のように滞在期間は長くありませんが、それぞれ2週間程度。それを続けるつもりだったのですが、結局コロナで閉じ込められちゃって残念でしたね。

でもようやく6月に、僕が指導するツアーで中国の東チベットに行くんです。15日間、4輪駆動車で3500キロ走るツアー。蝶々だけではなく高山植物も撮ります。実は中国に行くのは今回が初めて。これが久しぶりの海外撮影ですね。

――ありがとうございました!

5月28日(日)に放送予定のNHK「ダーウィンが来た!」にご出演


文・安藤菜穂子
写真・竹中あゆみ

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